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今回の世界での彼との再会は早かった。この時代はやはり令和で、私はどこにでもいる会社員。人事部の事務職員として働いていた。その会社からの帰り道で見つけてしまった。
会社の最寄り駅ではなく、たまたま用事があっていつもと違う駅に向かって歩いていると、彼は駅前から少し離れた公園のベンチ付近で、必死になって何かを探していた。
暗がりの中スマホの電灯をちらちらと照らす。灯台のように、まるで私に居場所を知らせているかのように。
落とし物でよくありそうなのはコンタクトだけれど、この暗がりでは間違いなく見つからない。私ならコンタクトをこの暗がりで落としたなら、一瞬であきらめることだろう。どうせ使い捨てだし。
しばらく眺めていたが、彼は諦めなかった。つまりコンタクトではない。しかも探し方が妙に遠慮がち。膝を地面につき恐る恐る動き回るので、壊れた恐竜のおもちゃみたいにリズム感のない動きだった。不協和音が私の頭の中に鳴り響く。
自然と私の足が歩みを進めた。
「何かお探しですか」
我慢しきれず話しかけてしまうが、今までの経験上わかっている。見つけてしまったら、知り合いになってもならなくても彼は死ぬ。だからもういいやと半ば投げやりで話しかけた。どうせ結果は一緒だった。
「あ、はい……」
彼は少し戸惑っているようだった。それはそうだろう。夜に知らない女性が話しかけてくるのだから。
「一緒に探しましょうか?」
「いえ、こんな夜に申し訳ないので」
「時間があるので大丈夫です。何をお探しですか?」
彼は本当に申し訳なさそうに、しばらくうーんと悩んでいたが、私の本気が伝わったようで返事をくれた。
「メガネ……です」
「メガネ?」
そんな大きなものはすぐに見つかるのではないかと思ったが、そうではないらしい。
「すぐに見つかるかと思ったんですが、かなり視力が悪いんです。それでメガネを割ってしまわないように恐る恐る探していたんですが、全然見つからなくて」
何で急にメガネを落としたんだろうという不思議はさておき、とりあえず周辺をきょろきょろと見渡す。すると彼が探しているベンチ付近とは離れた場所に、キランと光るものを見つけた。
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