タイム・イズ・スパークル

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「何で声をかけてくれたんですか」  何でって言われても……彼が彼だったから、とはとうてい答えられない。 「すごく……困っているみたいだったので」 「なるほど、ありがとうございます。確かに困っていました。ほとんど何も見えなかったので」 「なら人助けできてよかったです」  私は少しでも喜んでもらえたことに安堵した。 「駅まで行かれるんですか?」 「はい」 「ではそこまでご一緒に。コーヒーでもお礼に買わせて下さい」 「いえいえ、たいしたことはしていませんから」  私は、両手を振って全力で拒否した。あまり深く関わりたくはなかった。 「あ、すみません。そうですよね。いきなり知らない男に誘われても気持ち悪いですからね。ただ、お礼がしたかっただけなんですが、ほんとに申し訳ないです」 「いや、いえ、そうじゃないんです。気持ち悪くなんかないです。ただほんとにお礼されるようなことではないので……では、駅まではご一緒に。コーヒーとかお礼はいいので」  彼はにっこりと微笑んでから頷いた。 「気を使わせてしまったようですみません。駅まではちゃんと送らせていただきますので」  私たちは並んで歩きながら、ポツポツとお互いについて話した。 「困っている人を見逃せない質なんですか?」 「いや、そういうわけじゃないんですが……」 「そういうわけじゃないんですが?」  私はゆっくりと前に進む自分の靴に目を向けながら考える。どの時代でも彼に会うと考えてばかりだった。 「ずっと、助けられない人がいるんです」  思わず本音を話してしまう。私はいつの間にか彼に相談を始めていた。彼はそういう大らかな空気をまとった人で、スポンジみたいに柔らかな感覚があった。いつの時代でも変わらない。私の気持ちをまるっと吸収してくれる。
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