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ふと気がつけば、またここへ戻ってきていた。がらんとして、生命の息吹も自然摂理も何も感じない虚無の世界。異空間であるのに現実である場所。
定期的にここに戻ってくる仕様になっている。そして私は毎回選ばねばならない。右か左か、どちらの道を進むのか。たまには上だったり下だったりしてもやることは一つ。選択だ。
何度選んできたかはもう忘れてしまったが、数え切れないことは間違いなかった。そして今日も――
目の前には二手に分かれた道が見える。道の先はモヤがかかっていてよく見えないが、右手は真っ直ぐに伸びた道。左手はくねくねと曲がりくねった道。
今回の道はかわいらしいものだった。いつもなら空中を一回転している道だとか、途中に大きな川が流れているのに船も何もない道だとか、地下に潜っていく道だとか、そんな不親切な道ばかりだった。
だが今回はよくある平凡な道ばかり。どうせ平凡ならと思って、真っ直ぐに伸びた道を選択した。
その先には何が待ち構えているのだろうか。戦国時代の武将たちか、恐竜と戯れる人間の姿か、開国で華やぐ異国情緒漂う街並みか、立ち並ぶビル群の隙間から吹く生暖かい風か。
どの世界もたいてい知っている。だって私はタイムトラベラーだから。
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