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「この壮大な景色を眺めていると、僕は自分がとても小さくて無力に感じる」
「それは私だって同じ。仕事はとても窮屈で、両親とは喧嘩ばかり。いつも私はどうすればいいか分からない」
ミキがヒロトの手を握った。ヒロトがミキの瞳を見つめた。
「僕はまだ、ミキに何も伝えられていない」
それから二人は何も言わなくなった。一時間が経過した。満天の星空となった。私は固唾を呑んで二人を見守った。
ヒロトの顔がミキの頬に近づいた。ヒロトがようやく愛を決める。私はそう確信した。そして悪魔の槍を強く握りしめた。
「帰ろうか」
ミキの耳もとでヒロトが囁いた。私は耳を疑った。
「えっ・・・あの・・・」
「あまり遅くなると両親が心配するよ。それにお互い、明日は仕事なんだし」
「私、帰りたくない・・・」
しばらく黙った後、二人は車に戻っていった。私は後部座席に忍び込み、二人の様子を伺った。二人に会話は無い。車が走り出すと、私は後部座席から抜け出して空から二人の車についていった。私は二人のそばにいたくない気分だった。
長い帰路の途中でどこにも寄らず、車はミキの家の前に着いた。しばらくしてミキは車から降り、ヒロトに手を振って家の中に入っていった。
【結局、今回も何もなし・・・】
私はこの時点で、二人のことなんてあきらめちゃえば良かったのだ。それなのにまだ、私はこの二人にこだわった。
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