カニバルプラント

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 それから毎日毎日雨ふりで暗く、薄暗い部屋で僕はひとり物思いにふけった。  食虫植物にも以前ほど興味が無くなり、閉めっぱなしにした窓辺に鉢植えを置きっぱなしにしている。  どうせ放っておいても家の中にいる蜘蛛や虫を食って生きているのだろう。  僕が落ち込んでいても無関心で、もりもり食って元気で。  天気のせいもあり、心にカビが生えそうだった。  この一週間のあいだ、太陽が姿を現した日はなかった。  夜は床に寝そべり、クッションを頭に乗せ、テレビをつけてずっと画面を眺め続けた。  アナウンサーやタレントが何を言っても言葉は頭の中を通り抜け、目を開いていても僕は何も見ていなかった。  動かそうと思えば動くはずの体を横たえたまま、起きているのか寝ているのか自分でもよく分からない。  食欲も落ち、冷蔵庫の中には、肉はおろか、ヨーグルトもなく、買い置きのカップめんも残りわずかとなったが、それでも買い物に行く気が起きない。  ふと思い出し、起き上がって、窓辺の鉢植えに顔を近づけ、数日ぶりにまじまじと見つめた。  食虫植物は、心なし少し痩せたようで、色も薄くなっている。  ちょっといい気味だ。僕は薄く笑みを漏らした。  明日も朝がやってきて、やる気の出ない一日が始まる。  僕はただ息を吸って吐いているだけの毎日にうんざりしてきた。  真っ暗な心を抱えて、それでもいつのまにか眠っているらしく、気付くと朝になっているのだった。  目が覚めた僕は、ため息をつき、頬が痛痒いので掻こうとして、仰向けになったまま手を顔の方にやった。  最近掃除もしていないので、散らかった紙屑にでも触れてしまったのだろう。  すると、指先にべたっとした感触と、頬にちくりと刺すような刺激があった。 「え?」  顔を左右に振ると、何かに引っ張られる。そして痛い。  そいつをそっとはがそうとすると、頬がびりりと痛む。 「何?」  鏡を見ようと上体を起こすと、ビッという、嫌な音とともに頬が熱くなり、切り裂くような鋭い痛みが走った。  見下ろすと食虫植物が僕の寝ていたあたりに横たわり、その茎には肌色の皮膚とうすい肉片がくっついている。  自分の頬に手を当てると真っ赤な血がついて、薄くへこんだ傷跡がある。  僕は再び床を見下ろした。  食虫植物は葉を丸め、僕の頬の肉片をうまそうに咀嚼していた。                  
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