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改めて、鉢植えの中身をよく見てみる。
黒い土の上には、小さい花をつけたひと株の草が生えている。
スミレに似ているが、スミレより色が淡く、筒状の花弁の先がぱらぱらと開いている。印象の薄い、どうにも曖昧な形の花だ。
ひょろりとした一本の茎の上には、そのとりとめのない花が咲き、下は茎と土が接するぎりぎりのあたりに、受け皿みたいな形をした小さい葉が三枚くっついている。
この華やかさのかけらもないわびしい植物は、僕の殺風景な部屋をいっそう寂しく見せるではないか。
いっそ、食べることができるもやしとかハーブとかのほうが、生活が引き立つだろうに、どうしてこんなものをくれたんだろう。
ふいに僕はこの花の育て方も何も知らなかったことに気付き、先輩にラインした。
「ごめん、言うの忘れていた」
「家の中じゃなくて、外に置いといて。窓際に置いた? じゃあ、窓開けて。もともと湿地に自生してるから、水は切らさないように。あんまりじゃぶじゃぶあげるなよ。以上」
気まぐれでいきなり旅行に出かけたり、突然何かをくれたりする先輩だからこうして面食らうことがよくある。
花はさみしげに咲き、ずいぶん弱々しく見えるのだが、外の風に当てていいのだろうか? まあ、言われた通りにするしかない。
鉢の下に敷いている白いプラスチック製の水受けは、乾燥してからからになっていたので、コップに水道の水を汲み、流し込んだ。
窓を開ける。
細い茎に、無数の水滴がついている。
汗でもかいているように。
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