カニバルプラント

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 先輩から鉢植えをもらった。  学食で、カレーを食べようと、皿の端にある福神漬の赤い小山をスプーンで崩したところで、目の前に白くて不透明なビニールの手提げが置かれた。 「それ、特別天然記念物だから」 「何で持ってるんですか?」  幾分、責め口調で言ってしまったけれど、はぐらかすようにへらりと笑い、 「かわいいだろ、それ。大事にしてくれよ」  と、僕に押し付けて、昼休みの混雑にまみれてどこかへ行ってしまった。  カレーの皿にスプーンを斜めに刺して、食べるのをひとやすみ、ビニールの手提げを持ちあげてみる。  上からのぞくと、ゴム製のぼろぼろの鉢に黒い土が盛られ、小さい花が咲いている。  両掌にちょうど収まるくらい大きさのくせに、いやにずしりとくる。  午後は講義が無いのでまっすぐ家に持って帰った。  ビニール袋を剥いで窓際に置いてみると、大きさはちょうどいい感じ。  机と、布団と本棚とテレビしかない部屋に、僕以外の生き物が入ったのは、これが初めてだった。
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