78 S

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 昼食を終えて、お皿を洗う匡也を背中から抱きついて眺めた。 「あ、皿片しとかないと妹にバレるな」 「え?」 「お前が来るって母親には言ってあるけど、妹には言ってないんだよ。うるさいから」 「じゃあ、オレお皿拭くよ」 「サンキュ。布巾、そこにかかってる縁が青いやつ」 「うん」  これならオレにもできる。  手を洗って、水切りカゴに置かれていくお皿を拭いて、場所を訊きながら食器棚に戻していく。 「家でやっても全然楽しくないけど、匡也とだと楽しい」 「ははっ、そっかそっか。俺も詩音がいるだけで楽しいよ」  最後のお皿を食器棚に仕舞ったら、匡也が後ろからぎゅうって抱きしめてくれた。 「ありがと、詩音」 「ううん。こっちこそありがとうね。いつもいつも甘えてばっかりで…」  抱きしめてくれてる匡也の腕に、胸の前で手を添えた。 「…オレ、だめになりそう…」 「なればいい」  耳元で低く囁かれて、ドキンと強く心臓が跳ねた。  ぎゅうっと強く抱きしめられる。 「言っただろう?甘やかしたいって…。俺がいないと生きられないぐらい甘やかしてやりたい。ずっとこの腕の中に抱きしめてたい。…だから、ずっとずっと俺のそばにいて、な?詩音」 「…あ…」  耳から注ぎ込まれてくる愛の言葉。  あったかいと、熱いと、優しいと、激しいが混ざってる。  怖いぐらい幸せ  匡也の腕の中でもぞもぞと方向転換をして、ぎゅうっと抱きついた。 「…オレも、ずぅっとここにいたい」  匡也が大きな手でオレの肩や背中を撫でて、しっかり抱きしめてくれる。 「匡也がやだって言うまで、オレ匡也のそば離れねぇから」  ぴったりとくっついた身体に、2人分のドキドキが響いてる気がする。 「…俺が、嫌だって言うと思うか?」  ちゅってオレの頭にキスをして匡也が言った。 「思わない。…わっ」  スッと屈んだ匡也に縦に抱き上げられた。 「正解。だからお前はずっと俺の。な?」  抱き上げたオレを見上げて、匡也が自信ありげに笑って言う。 「うん。で、匡也はオレのー」  匡也に腕も脚も巻き付けて、ぎゅうっと抱きついた。  大好き 「あっ」 「ん?」 「雪降ってない?外」 「んー?」  オレを抱いたまま匡也が窓辺に進んでいく。  外、白い。  細かく軽そうな、粉砂糖みたいな雪が風に舞っている。 「やっぱ降ってる。うわー、帰り寒そう!」  匡也の首に抱きついてそう言うと、匡也はくすっと笑った。 「…じゃあ今のうちに、もっかいあっためてあげようか?…ナカから」 「あ…」  身体の奥の熾火に、ふぅーっと息を吹きかけられる。  見つめられて、見つめ返して、うん、て頷いた。 「…あっためて、匡也…。熱が出ちゃうぐらい…」 「うわ。また煽ってくるなぁ、詩音」  くすくす笑いながら、匡也はオレを抱いてゆっくり歩く。 「ほんとめっちゃ可愛い。どうしよう、俺。幸せすぎる…」  ぎゅうっと抱きしめられて、もう体温が上がってきてる気がする。  ドキドキ ドキドキ 「…匡也は、すっごいカッコいい、よ?」  なんか恥ずかしくて、本人に言えてなかった言葉。 「マジで?ははっ、うれしー。サンキュ、詩音」  そう言って笑った顔も、めちゃくちゃ格好いい。  大好き  大好き大好き 「大好き、匡也」 「俺も詩音のこと誰よりも好きだよ」  オレを抱いたまま、匡也が部屋のドアを開ける。 「…なんか、すっごいクリスマスになったね」 「だな」  ふふっと笑い合って、口付けを交わす。  匡也がそっと部屋のドアを閉めた。  了
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