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「25日は午前練だったじゃん?午後は壮太と予定入れてたわけ。どこ行くかとかめっちゃシミュレーションしてさ。それこそイルミネーションだよ。一番綺麗な所で告白しようと思ってた。…ずっと、好きだったから、壮太のことが」
ちょ…っと待て
待て待て待て
え?
井澤部長が?小野会長を?
井澤部長がくすっと笑った。
「ハトが豆鉄砲くらったってこんな顔だろうなって顔してんぞ、羽村お前」
膝に肘を突いた姿勢になって、井澤部長はまた、はぁー…っと大きなため息をついた。
「…ずっと好きだったのにさ、ずっと言えなくて。普通の友達っつーか、それよりもちょっと雑な感じの扱いしてた。幼馴染みだからこその何でもありみたいな?ほんとは大事にしたいのに、照れ臭くてできなくて悪態ついて…。でもおれが壮太のことは一番解ってるぞ、みたいに思ってた」
う…そだろう?
この人がそんな…
「それがさ、まさかの告白だよ。で、『瞬、悪いんだけど25日キャンセルで』って言われてさ。そんでヤケクソんなってやったのがあのクリスマスパーティってわけだ」
返す言葉なんてない
ただ井澤部長を見つめている
「だからさ、羽村すげぇなって尊敬してんの、おれ。お前がいつから佐伯くんのこと好きだったのかは知んねぇけど、佐伯くんが体育館に来るようになった頃にはもう好きだったんだろ?体育館にいる時も、帰りも、それから学食とかでもさ、お前佐伯くんのことすげぇ大事にしてたじゃん。佐伯くん本人が気付かねぇのが不思議なくらい、出し惜しみせずに好意をぶつけてた。おれが全然できなかったこと、お前はやってた。それで段々佐伯くんがお前に落ちてくのが分かった。あんだけ大切にされたら、そりゃ落ちるよなって思いながら見てた」
『すげぇなって思ってさ』
って、この前井澤部長に言われた。
何のことだろうって思ってた。
「お前がさ、そうやって必死んなって佐伯くんを手に入れたって分かってるからさ、いくら好みでも狙ったりしねぇよ。ただ、お前の反応と佐伯くんが可愛いから、ついちょっかい出しちまうんだけどさ」
あははって笑う井澤部長に、どんな顔をして向き合えばいいか分からない。
でも一つ、分かったことは。
あの、らしくない表情の理由。
井澤部長の話を聞きながら思い出した。
部長は小野会長がいる時に、ふとあの切ないような表情をする。
「…あの…」
「ん?なんだ?羽村」
訊いていいのか?こんなこと。
…でも気になる
「部長は、今でも小野会長のこと…?」
恐る恐る井澤部長を見ながら訊くと、部長はくすっと笑った。
「ああ、好きだよ、今でも。やっぱさ、初恋は特別だよな。忘れようとしたって、なかなか忘れられるもんじゃねぇわ」
小野会長と詩音は全然タイプが違う。だから好みとか、そういうのを超えた何かがあるんだろうと思う。
軽く頭を横に振りながら、井澤部長はまた深いため息をついた。
「かと言ってさ、距離取って離れんのも嫌なわけ。恋人にはなれなくても、友達の中では一番でいたいっていうね、未練がましい男なわけさ、おれは」
「そんな…」
それ以上の言葉が出なくて、井澤部長を見つめてしまったら、またゴツい手で頭をわしゃわしゃ撫でられた。
「お前はほんと可愛いなぁ、羽村。んな顔すんな、おれのことは鈍くせぇやつ、とでも思っとけ」
「いや、それは…」
さすがに無理
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