68 Sion

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68 Sion

 2日ぶりに会った匡也は、なんかちょっと雰囲気が変わってた。  どうしよう  休みの前より格好よくなってる  この2日間の部活の時に何かあったのかな。  それに元々優しい匡也が、今までよりもっと優しい。  オレを見る目が、かけてくれる声が、2人で出かけた時みたいに甘い。  …学校なのに。  中島と三田も一緒にいるのに。  そう思ってドキドキしながら昼食を取って、匡也に肩を抱かれて教室に戻った。  教室では数人ずつのグループができてて、それぞれ盛り上がってる。  オレの席は女子のグループが使ってた。  中島が匡也の机に腰掛けて、三田は匡也の隣の席の椅子に座った。  オレはどうしよっかな  と思っていると、自分の席に座った匡也が腕を伸ばしてオレの腰を抱き寄せた。 「わわ…っ」  そのまま匡也の膝にのせられてしまった。 「お前はここ、な?」  耳元で匡也の低く甘い声が響いた。  え、え、え、でも…っ  この前も自分から匡也の膝に座ったのに、こうして抱き寄せられるとすごいドキドキする。  しかもしっかり腕が腰に回ってるし…っ  おろおろしていると目の前にいる三田がくすっと笑った。  そしてスッとオレの方に身を乗り出した。 「んな不安そうな顔すんなよ、佐伯。お前専用の場所なのに」 「え…?」  ぼそっと言われた言葉でドクンと心臓が強く打って、教室のザワザワが頭の中で膨張していく。 「おい、大丈夫か?佐伯」  中島がオレの肩に手をのせたから、思わずビクッとして中島を見上げた。  匡也がオレをぎゅっと抱き寄せる。  なんでなんで?!  中島も三田も同じように笑ってた。  そして身を屈めてオレに近付いてくる。 「あのな、佐伯。お前と羽村の関係の呼び名が変わっても、おれが佐伯と羽村の友達なのは変わんねぇからな?」  周りに聞かれないように、低く潜めた中島の声が紡ぐ言葉の意味が、上手く頭に入ってこない。 「な…かじま…?」  え、え、え…? 「おれもだぞ?佐伯。お前ら2人とおれは友達だから、な?」  三田も中島と同じようなことを言ってる? 「え…、あの…」 「2人はさ、気付いてたんだよ、俺らのこと」 「え…?」  オレを片腕で抱きしめてる匡也が、こそっと言った。 「でも気付いてるっていつお前に言ったらいいか分かんなくて…」 「え?え?え?…ま…じで…?」
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