75 S

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 オレの顎に触れていた手が、コートのファスナーのスライダーを摘んで下ろしていく。  キスの角度が変わって、上顎を舐められながらファスナーが外れたのを感じた。  匡也のコートに手を這わせてスライダーを探りあてた。  それをゆっくり下ろしていく。  オレが匡也のコートのファスナーを外してしまうのを待っていたように、匡也がオレのコートの中に手を入れてきて、肩からするりと脱がしていく。  ぱさっと足元にコートが落ちた。  キスを続けてるから息は苦しい  でも幸せ  オレも匡也のコートを脱がしたくて引っ張るんだけど上手くいかない。  重ねている匡也の唇が笑う。  匡也は自分でコートを脱いで床に落とした。  コートを脱いだ分、匡也に近くなった。  もっともっと近付きたい  少し後ろに押された。膝裏にベッドが当たる。  ちゅっ、と音を立てて唇を離されて目を開けると、匡也がオレの肩を押さえて座るように促した。  ドキドキ ドキドキ  ギクシャクした動きでベッドに腰掛ける。  匡也がベッドに膝をかけたから、スプリングが軋んで身体が匡也の方に傾いた。肩を押されてゆっくりと身体を倒される。  ドキドキ ドキドキ  オレの両側に手を突いて匡也が見下ろしてくる。 「…詩音」  名前を呼んで、額にキスをしてくれた。 「詩音」  次は頬に。 「好きだよ」  そして唇に。  オレは匡也に手を伸ばして、少し硬い真っ黒な髪を撫でた。  好き 好き 大好き  キスを繰り返しながら、匡也が大きな手でオレの身体を撫でてくれるのが気持ちいい。  匡也の熱い手のひらがオレに触れる。  服を脱がされながら、脱がされるために着てきたみたい、って思った。 「精一杯優しくするから…」  そう言った匡也が、柔らかくオレを溶かしていく。  何度も何度もキスをして、何度も何度も好きって言ってくれる。  すっごいしあわせ  抱きしめて、抱きしめられて、身体中で匡也を感じた。    好きって言って、キスして、また好きって言って…  幸せの無限ループ 「すっげぇクリスマスプレゼントもらった気分」  匡也がオレに口付けながら呟いた。 「オレも…。あ、でも」 「ん?」 「プレゼントも、あるよ?」  匡也を上目に見ながら言うと、アーモンド型の目が細められた。 「マジで?うれしー。…俺もあるよ」  笑った顔、かわいい 「わー、うれしい。何だろ、楽しみ」    オレがそう応えたら、匡也がくすっと笑ってオレの耳元に唇を寄せた。 「…プレゼント、もちょっと後の楽しみに取っといてもいい?」 「え…?」 「もっかいしよ、な?」  優しいキスが顔中に降ってくる。 「…うん。する…したい…」  もっともっと、匡也の熱を感じたい。  ああ、でも  その熱に浮かされて言えなくなる前にもう一回伝えたい  匡也のその精悍な頬を両手で包んだ。  やっぱすっごい格好いい、オレの彼氏 「ん?」って顔をした恋人に、ちゅっ、てキスをする。  じっと見つめ合って…それから、 「だいすき」  って、口移しで伝えた。    
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