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77 S
「…雨降ったら、相合傘、したい。駅まで」
匡也のセーターを引っ張りながら言ってみた。
「ははっ、もちろんいいよ。なにそれ、可愛いなぁ」
がばっと抱きしめられて頬擦りされた。
「なんなら詩音ん家まで送ってくよ?それが1番長く一緒にいられる」
ちゅってまた頬にキスしてくれた。
「…帰したくねぇなぁ…」
匡也がそう呟いた時、遠くからピピピッて電子音が聞こえた。
「あ、できた。待ってて」
唇に掠めるようなキスをして、匡也が部屋を出て行った。
オレも、帰りたくないよ?
匡也とずぅっと一緒にいたい
「ごめん詩音、開けて」って部屋の外から声がして、慌ててドアを開けた。
「わ、すごい。いい匂い!」
「食お食お。熱いうちに」
コルクのマットにのってるドリアのお皿と、スープのカップをテーブルに並べる。
「すごい美味そー。匡也が作ったの?」
「作るってほどじゃねーよ。スープはインスタントだし。ほら食え、な?」
向かい合わせに座って「いただきます」って手を合わせて、スプーンでドリアを掬った。
チーズとろとろっ!
「わー、すげ。あ、うまーい」
「そう?よかった。昨夜のシチューのアレンジ。順に器に入れただけ」
「だけって言うけど、オレ的にはすごいよ?」
ケチャップ味のご飯にホワイトシチューがかかってて、チーズがのってる。
「嬉しい。ありがと、匡也」
えへへって笑いかけたら、匡也が、うん、うんって頷いた。
「…詩音が来るからってさ、ちょっと多めに作ってもらったんだ、シチュー」
「え?」
「詩音さ、三者面談の時、うちの母親に挨拶してくれただろ?あの時母親にお前の名前訊かれてて…。で、『25日は佐伯が来るから』って」
匡也がちらっとオレを見た。
「黙っとくのもさ『何で言わなかったの?』とか後で言われたら余計面倒そうだし。でも『友達が来る』とは言いたくないし…。で、『佐伯が来る』って」
とくん、と胸が鳴った。
「…オレ、『今日は羽村と会う』って言って出てきた…」
匡也が「あ」って顔した。
「オレも、三者面談の時お母さんに匡也の名前訊かれたんだ。お母さん、今日はオレが女の子とデートだと思ってて、だから『羽村と会う』って。『友達と』って言いたくなくて、それで…」
2人で目を見合わせて、そしてふふって笑った。
「俺らおんなじことしてるな」
「うん」
「やっぱ気ぃ合うな」
「うんっ」
おんなじ嬉しい
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