1 Sion

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1 Sion

 4月に高校に入学してすぐ、羽村(はむら)と連絡先を交換した。  羽村はオレと同じ機種、同じ色のスマホを持ってて、なんとカバーまでおんなじだった。  それがなんか嬉しくて  羽村といるのが楽しくて、ずっと喋っていたくて、もっと側に寄りたくて、自分でも気付かないうちに大好きになってた。    そして、奇跡が起こった。  11月、2学期の期末テストの発表の日。  オレは羽村とキスをした 「テスト終了ー!いえーい!」  期末テスト最終日の最後の科目が終わって、チャイムが鳴ったところで三田(みた)が伸びをしながら言った。周りも三田に合わせて拍手したりハイタッチしたりしてる。  みんなニコニコ。笑顔、笑顔、笑顔。  うん。テスト終わって嬉しい、よね。  でもオレはちょっと悲しい。  羽村とテスト勉強するのが、すっごく楽しかったから。  テスト発表の日以外はずっと、羽村と三田と中島(なかじま)とオレの4人だったけど。  中島が「行くぞー」って言うから、そっかーって思いながら付いて行った。  ファミレスとかファストフードの4人掛けの席で、羽村と隣同士で座って勉強した。解んないところがあるふりをして、羽村に身体を寄せてテーブルの下で時々指を絡めた。  羽村の手、おっきかった。  あ  羽村と中島、ベランダに出てった。2人で。  なんで? 「どーした、佐伯(さえき)。ぶすっとして。今日からまたカッケー羽村が見られるぞ?」  三田がにーっと笑いながらオレを覗き込んで言う。  カッケー羽村…っ  顔がぶわっと熱くなっていく感じがして、慌てて三田から顔を逸らした。 「学食開くし、おれも昼飯食って帰ろっかなー。佐伯、学食行くんだろ?」 「…うん」  机に肘を突いて、両手で隠すように顔を覆った。手のひらに頬の熱を感じる。チャイムが鳴って三田がオレの席を離れ、羽村と中島がベランダから教室に入ってきた。  なんで、寒いのにわざわざベランダに出てたんだろ。  羽村がオレの席の横を通っていく。目線だけ上げて羽村を見たら、羽村がオレの肩をぽんって叩いていった。  胸がドキンと鳴って、息が止まった。  羽村が触れていった右肩を左手で包んで振り返る。席に着いた羽村がオレの視線に気付いて微笑んだ。  わ…  なんか…どうしよ  めちゃくちゃ幸せだ  ただ、肩を叩かれて目が合っただけ  それだけなのに…  うちの担任の席替えルールでは「背の高い者は後方」と決まっていて、だから羽村はいつもオレより後ろの席で、授業中に姿を見ることができない。  別に座高が高いわけじゃないし前だっていいと思うのに、先生は謎ルールをやめてくれない。  だから授業中は羽村を見られない。  後ろにも目が欲しい。  手のひらとかでもいいな。後ろに向けて羽村を見るの。  なんてバカなことを考えてる間にホームルームは終わってた。  
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