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 その頃、実家へと向かっていた裕樹の車は、母が営む洋品店へと到着した。この店は、信濃大町駅から十五分ほど歩いた場所にある。 一階は国道に面した洋品店の店になっており、一階の一部分と二階が家族の居住スペースとなっている。 店はアーケード街になっている為、駐車場がなく、裏に借りている駐車場へ車を停めた。 車を降りると、三人は実家へと向かった。  店のドアを開けるとピンポーンというチャイムの音が鳴った。すると母が、 「いらっしゃいませ~」 と愛想の良い明るい声で奥から出て来た。そして三人の姿を確認すると、 「あら、あんたたちだったのね」 と、急にそっけない顔になった。 そして優羽と流星の姿をじっと見つめると、 「あんた少し老けたんじゃない? 苦労は人を老け込ませるからねぇ」 そう言うと、流星の方を見た。そして、 「もうこんなに大きくなったんだ。時の経つのは早いわねぇ。ぼーっとしてたら、人生なんてあっという間に終わっちまうわ!」 そう言うと、くるりと踵を返して奥のキッチンへと戻って行った。
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