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 それから優羽は、ポットに沢山入れて来た温かいコーヒーを、 坂本や翔真達に配り始めた。 持って来たパンも数が足りそうだったので、コーヒーと一緒に渡した。 車の中で温かいコーヒーを飲みながら、岳大達の帰りを待っていると、 井上の携帯が鳴った。 電話は岳大からだった。 井上は慌てて電話に出た。優羽や翔真にも聞こえるように音声をスピーカーモードにしてくれた。 「井上君? 佐伯です。やっと着いたよ。心配かけたね。申し訳ないけれどクタクタなんで迎えをお願いします!」 「佐伯さんお帰りなさい! もう本当に心配しましたよー!」 「ははは、あの天気の変動は全く予想外だったよ! でも撮影がほぼ終わった後だったから特に支障もなかったようで本当に良かった。あ、それと、優羽が心配していると思うから、無事下山した事と、心配かけて悪かったと伝えてもらえる? メッセージを送ろうと思ったんだけれど、手がかじかんでいて文字が打てないんだ」 岳大は困ったよという様子でそう言った。 すると井上は言った。 「じゃあ直接言ってあげて下さい!」 「えっ?」 そこまで話した時、岳大達四人の姿が登山道の方から見えて来た。 四人とも頭にはライトが光っていた。 そのライトが、真ん中を歩く岳大の顔を浮かび上がらせたその瞬間、 優羽は目に涙をいっぱいためながら、車の外に飛び出した。 そして岳大めがけて思い切り走り始めた。
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