雨が、降る。

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雨が、降る。

 雨が、降る。  雨の匂い。  傘を手に歩く、人の動き。  誰かの気持ち。  誰かの予定。  雨の日には雨の日の、装いがある。  きらびやかな店先。  人待ち顔の誰か。  雨宿りをする、誰か。  それぞれの目的を胸に、傘を差して歩く人達。  肩を寄せ合って、笑い合う男女、家族。  雨の日には雨の日の、愛情がある。  雨は、キライじゃない。 ●  だけど。  雨の匂いと温かさが一杯詰まっている駅で。  バス停で、交差点で、帰り道で、部屋で。  私には、見つけられないものがある。 「お待たせ。ああ、こんなに濡れちゃって……」 「俺の傘で相合い傘しようか」 「手を繋ぎたいって聞くこと?! はいどうぞ」 「夕飯食べたら膝枕、だめ?仕事が忙しかったので、癒やしがほしいです。え?! 有料?! 」  君がここにいたら、こんな風がいいな。  そんな夢を見る自分の馬鹿さに、苦笑いする。  息を切らせて、傘を差し出す君。  温もりを感じられる程、肩を寄せてくれる君。  差し出した手を嬉しそうに繋いでくれる、君。 ●  どんなに勉強を頑張っても。  どんなにオシャレをしても。  どんなに気持ちを伝えても。  どんなに涙を零しても。    私に笑顔で傘を差し出してくれる君を。  私を好きになってくれる君を。  私は、今でも。  見つけられない。 
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