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一日目・これは夢?
毎月あの日になると想像する事があった。
『男にも、生理痛があればいいのに』って。
だけど、本当にそんな事が当たり前だったら世界はどうなるのかな。
私は今、夢を見てるんだろうか。だとしたら滅茶苦茶ヘンな夢だ。
一日目。
「おはようございまーす…。」
しんどい。気も体も重い。今日は生理初日。二日目、三日目はピークでもっとしんどいだろう事が予測される。こんなの毎月の事。それもじっと我慢。そんなの当たり前で普通の事。痛いなんて愚痴は許されない、と思ってた。
さっき鎮痛薬飲んだけど下腹部まだ地味に痛い。効き目が出るまでまだ時間がかかりそう。
今朝は危うく遅刻しそうだった。なぜなら。
朝起きたらシーツの一部に赤いシミ発見。想定外!
朝が弱い自分にとって、ただでさえ出勤前は時間との戦いだというのに!仕方がない。慌ててシーツ引っぺがしてバスタブにそこそこの量のぬるま湯、洗剤を入れて手で軽くかき回し、血痕を消滅すべく『その部分』を軽く手もみで予洗いし、シーツをバスタブに突っ込んで『つけ置き洗い』という形にして急いで家を出た。
被害はシーツでせき止められた。マットレスまで及ばなかっただけまだ救い。
本当は休みたい。しかし生理休暇なんてのは名目上だけ。現実はそんなもの無いと同じで使えない・休めない。「いいよな女は。生理って言えば何でも通ると思うなよ。」とか「アレってそんなツラいもんなの?大袈裟だろ。」とか陰で言われる事もあるのを知っている。痛みも個人差があるから同性でも重い人と軽い人・全くない人がいて理解されない時だってある。
中学時代は理解の薄い女性の体育教師にそれで理不尽に怒られたっけ。
生理で抑うつ状態になると昔の嫌な思い出も甦ってしまう。
「おはようー。あ、今日丸河君、休みだから。生理休暇だって。」
は?丸河さんは男性だ。
「?すいません。よく聞こえなかったです。もっかいお願いします。」
「だから。丸河君、生理休暇。」
「丸河君て、あの丸河君、ですか?えーと、あの。(小声で)女性だったんですか?あ、彼女さんが生理、とか?」
「何言ってんの?男性だよ。知ってるでしょ。まぁ妊活に入るとか入らないとかって話は聞くけど噂だからなー。そこは本人に確認してみる。」
「にんかつ…結婚してたんだ。」
「してないよ?なんでもリバーシで彼女さんと勝負して負けたとかで、丸河君が妊娠したらすぐ婚姻届がどうとかって。まぁ噂だから知らんけど。」
リバーシ?ってあの白黒ひっくり返すゲーム?負けたら妊娠?丸河君が?
何を言ってるんだろう。意味不明。聞き間違いか。ちょっと耳掃除し直した方がよさそうだ。綿棒と耳かき、あとで買いに行こう。
「おい!誰だよトイレのゴミ箱汚してる奴は⁈恥を知れ‼」
いきなり職場の室内に入って来るなり怒ってる人がいる。何⁈
「あ~またか。最近あるんだよな~。個室のゴミ箱ん中、ちゃんと畳んで目立たないように包んで捨てとけっての。掃除してくれる人だって好き好んで他人のそんなもんまでやってんじゃねーってのによぉ。注意喚起しとけ~貼り紙でもさせとくか~?」
「ゴミ箱…?」
「トイレのだよ。サニタリーボックスって言う方がいいのか?折角可愛いデザインに一新したのに、個室に各一個でもトータル幾らかけたと思ってんだ~。」
「可愛いデザインて。」
「男女とも個室用の猫デザイン。犬のが良かったか?サイズも大き目だぞ。勿論兼用・障がい者用も。」
「男性用も、ですか?個室の?」
「そう、アンケート取ったけど圧倒的猫勝ち。どこのも同じだ。」
同じって、同じって? あ、多様性っていう系の関係かな?
後ろからまた別な声がした。
「男子トイレ、ナプキンのストック切れてましたー。」
「あー。会社消耗品のは質がいまいちだから即文句言ってキレる奴はいねーだろ。大至急じゃなくてもいいが補充頼んどいて。第一こだわる奴は自分で気に入ったのを持参してるもんだ。タンポンは残ってるんだろ?」
「ほーい。」
生理用品が会社のトイレ消耗品?まさか経費で落ちてるってこと⁈うそぉ??
「あ、俺のこだわりは肌触りと通気性でーす。」
挙手したのは多聞先輩。出生時から男性の筈だよね。
「馬鹿。そりゃ皆同じだ。」
いつも真面目な早川君がお腹を抱えて入って来たかと思うと開口一番、
「ねー誰かナプキン持ってる人いないー?羽根つきで満月社のセンシティブ・シリーズの奴~!僕あれじゃないと駄目なんだけどぉー。今月予定より急に早く来ちゃって~。ついでに痛み止めも持ってる奴いないかなー。」
「あほかー。そんなこだわるなら普段から自分で用意しとけー!」
⁈今の会話なんですかーー⁈
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