素質

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 正午ちょうどは、雲の上で迎えた。  飛行機で弁当箱を取り出し、その場で食べるということも考えられなくはない。  ただ、私の持っている弁当箱はアルミ製だ(もっとも、これは包みの上から触った感触だけれど)。昼過ぎに福岡に着いて日帰りということもないだろうに、洗わなければならない弁当箱を持たせるものかな。  感情の面から言っても、せっかく福岡に行くのであれば、例えば明太子定食とか、豚骨ラーメンとか、そういったものを食べたいんじゃないか。少なくとも、私ならそうしたい。  しかし――まあ、色々考えたところで、何を食べたいかは家庭によるか――と自分を無理矢理納得させようとしたところ、彼の車が駐車場に入っていくのが見えた。 「そこ、入ってください」  タクシー運転手に力強く言ってから、ようやく気が付く。  彼の車が入っていったのはランクの高そうななホテルだった。  チェックインの時間にはまだ早いだろう――と思いながら、タクシーから出た彼を眺めていると、衝撃的な光景が目に入って来た。 「……え?」  その光景に気を取られてか、はたまた私のカルマによってか。  支払いに手間取るうち、彼の姿はホテルへと消えていった。  また私は、追いつくことができなかった。
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