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いつでも帰れる家を、部屋を。
居心地のいいこの場所を作ってくれていたのは他でもない彰だった。
彰に噛まれて、彰しか受け付けなくなって?
そして彰を失ったとして…………それは、『噛まれていない時』と何が違うのだろうか。
噛み痕があってもなくても、俺には生涯彰だけだとそうわかっていたのに――……!
震える足を物理的に叩いた俺は、落ちている服をなんとか着て玄関へ向かう。
あまり足に力が入らないせいで転びかけながら玄関を飛び出すと、階段を降りようとしている彰が目に飛び込んできた。
「あ、きらッ!」
転がり出た勢いのまま彰の背中に飛び付いた俺は、階段の段差のお陰で目の高さにあった彰の首筋にガリッと噛みつく。
「ぅ、えっ!?」
その全てに驚いただろう彰が余りにも間抜けな声を出したが、そんな事お構い無しに何度も何度も歯を立てた。
「ちょ、蓮? ど、どうしたの……?」
「……っ、くそ、噛み痕、お前にも付けばいいのに……。お前が俺だけのになればいいのに……っ」
「え、えぇ……?」
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