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意味のわからないことを呟く俺に動揺しつつ、ゆっくり振り向いた彰がふわりと抱き締めてくれる。
「……俺、怖かったんだ。彰の番になりてぇのに、もし彰が『運命の番』に出会ったらって……俺にはお前しかいないのに……って」
「そんな事考えてたの?」
「だけど違った、番だろうとなかろうと、元々俺には彰だけだった。……運命なんかに負けないくらい、俺には彰だけだった」
「……ッ!」
吐き出すようにそう告げると、ポカンとしていた彰の頬が一気に赤く染まる。
「……そんなの、俺だってそうだよ」
「え?」
「噛ませてくれないのは、蓮が『運命の番』を待ってるんじゃないかって怖かったんだ。だから早く俺のにしたくて……だから噛みたくて……、焦ってた」
「そ、んなこと」
――ある訳ない。
“ある訳ないのに、俺のせいでこんなに不安にさせてたなんて”
彰の言葉に、俺は自分の愚かさを再度実感した。
「蓮に俺を選んで欲しくて、ずっと一緒にいて欲しくて。だから部屋も蓮が好きそうなものを選んで、蓮の物も増やしてさ。この部屋自体が、蓮を囲う巣……の、つもりだったんだ」
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