143人が本棚に入れています
本棚に追加
「そだねぇ、運命かぁ」
しみじみと続けられる“運命”という言葉に、ジュクリと心臓が傷んだ。
――運命の番。
ドラマや漫画ではよくある設定だが、そもそもその『運命』に出会える人間はどれだけいるのだろうか?
“一目見たらわかる……か”
穏やかに、緩やかに。
じっくりと想いを育んだ俺達には無縁の言葉。
重ねた時間に、育んだ絆に。どれだけの誇りを持っているとしても。
“……もし彰が、その運命とやらに出会ったとしたら”
オメガは噛まれたアルファしか受け付けなくなる。
しかしアルファは何人でも番を作る事が生物学上可能なのだ。
“番になったとして、もし彰に『ホンモノ』が現れたら。それでも、俺に会いに来てくれるのか? 抱いてくれるのか?”
彰のいない未来を想像し、彰だけを求めて泣く自分が簡単にイメージ出来てしまう。
ひとり世界に取り残されるようなじわりとした恐怖が、「番になろう」と言ってくれる彰を受け入れられない理由だった。
“好きだよ、すげー好き。だからこそ……怖い”
ぽすんと彰の肩に頭を預けると、柔らかく微笑んだ彰がそっと頭を撫でてくれた。
最初のコメントを投稿しよう!