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彼女はいつものようにLサイズのジンジャーエールをトレーに乗せて立っていた。
「また飲んでる、それ」
「いいじゃん。好きなの」
「なら、僕だって。トレーに乗せようとは思わないけど」
「階段でこぼしたくないだけ」
「なに、そんなに重いの?」
「夜勤明けの握力の弱さ、なめるんじゃないわよ」
「……誇らしげに言うことかな」
2か月前。この本を帰りの電車に忘れた時のこと、僕は駅員の彼女と出会った。改札で忘れ物をしたと伝えると、彼女は事務室に届いていた本を僕の手元に戻してくれた。それだけの縁のはずだった。
『あ』
『……あ』
それから数時間後の、朝4時のハンバーガーショップ。その本を読んでいると、2階に上がってくる新顔がいた。Lサイズのジンジャーエールをトレーに乗せた彼女だ。
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