未明にて

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未明にて

9097f5b7-276d-4914-abd5-522fccdc20e8 ぱらついていた雨は、予報通り本降りとなって朝が近いことを知らせる。壁にかかった時計の短針は四時を指した。ふと見下ろせば、新聞配達に向かう原付が、ライトを光らせて手前の大通りを転ばないよう慎重に横切っていく。 「……どこまで読んだっけ」  僕は手元の文庫本に目を戻し、最後に読んでいた行を探った。バイト店員が塵取りと箒をもって奥の喫煙席へと向かう。一瞬目が合った。「この客はフライドポテトを食べるのに3時間もかけるのか」とでも思ったのだろうか、少し間を置いてから持ち場に向かった。あいにくだが、もう少し居させてもらう。待っているのだ、あの人の『帰り』を。 「また読んでる、それ」
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