欲しいのはボタンじゃなくて未来なので

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交換しようと言われて慌てて自分のボタンに手をかける。 しかし動揺しているからか、なかなか千切れてくれなくて。 「⋯俺がやっていいか?」 そっと伸ばされる手にドキッとした。 “卒業する思い出にって事⋯なんだよな?” 突然自分の身に起きたミラクルに鼓動が早くなる。 絶対手の届かないと思っていた片思いの相手が、自分の服のボタンに手をかけているのだ。 “こんなの、俺⋯” 卒業したからってもう会えなくなる訳じゃない。 それでも、毎日のようには会えなくなる訳で。 “こいつは普通に女の子大好きだし、でも、だけど⋯” 脈があるかも、なんて思った訳じゃない。 でも少しくらいなら言ってもいいのでは、なんて思ったのは確かで。 「ほら、取れた。んじゃお前のは俺が貰うな」 お前はこっち、と渡されたそいつの第二ボタンを握る手に力が入る。 「ー⋯う、嬉しい、その⋯ほんとは欲しかった、から⋯」 それが俺の精一杯だった。 告白ではないけれど、それでも。 “俺の気持ちが、伝わりませんように” これからも友達ではいたい、なんて都合良すぎる俺はきっとただ臆病なだけなのだ。
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