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勝ち負けよりも大切なもの
「今日夜あいてる?」
付き合ってる人からそんな事を言われて期待しない男なんていない訳で。
“けど、コイツに限ってはない、よな⋯?”
ごくりと鳴りそうになる喉を必死に堪えた俺は、平静を装って確認する。
「なんかあんの?」
「見たい心霊番組あるんだよな」
「あーーー、そうだよな、うん」
“だよな、わかってた!”
期待した俺は悪くない、と必死に自分を慰めた。
腐れ縁で中学からの同級生。
ずっと片想いしていて、拗らせていた自覚だってある。
このまま高校も卒業するんだろうな、なんて考えていた高3の夏、お互いの進路が違う事を知った。
『俺、就職するつもりなんだ』
大学でもつるむんだろうと漠然と考えていたからこその彼の一言にいいしれない焦燥感を感じて。
“俺はたいして何も考えてなかったのに、その間にコイツはしっかり自分の人生設計を立てていたのか”と、気付き焦ったのだと思う。
『俺、お前の事好きなんだけど』
なんの脈略もなく突発的に溢れ出たその想いは、一瞬ぽかんと目を見開いた後に顔を背けられて。
『あー、うん、俺も』
なんて言葉で受け止められた。
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