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睡眠の質を上げる為に
「なに、まだ残ってんの?どれ」
「あ、あー、どれ⋯って聞かれても⋯まぁ、ちょっと」
隣の部署の主任である彼が少し眉を吊り上げそう聞いてくる。
突然現れた彼の問いに思わずまごついてしまうのは、彼が元々俺の教育担当だったからでー⋯
“昔から苛立ち隠さないんだよなぁ、この人”
部署が変わったのにまだ俺の世話をやこうとでもいうのか、抜き打ちのようにこっちの部署を覗いてはガミガミと文句を言われてばかりだった。
外ではにこやかで爽やかな仮面を着けているくせに、誰も残っていない時間の彼はいつもどこかイライラしている。
その理由がわからず、今日も今日とて戸惑っていた俺だったのだが。
「ほら、唇カサカサになってる」
「なッ!?」
突然彼の親指が俺の唇をそっと撫で、思わずビクリと肩を跳ねさせた。
「⋯⋯なに、感じちゃった?」
「んな訳ないでしょ!?」
少しかさついていたのは彼の指なのか俺の唇なのか。
無意識に彼が撫でた後の唇をペロリと舐めた俺は、その様子をじっと見る彼の視線に気が付いて。
“やば⋯!”
何故だか堪らなく恥ずかしくなった俺は、思わず頬が熱くなる。
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