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そんな赤くなってしまった頬を隠すように、くるりと椅子を回し再びパソコンに向き直り⋯
「早く帰れよ」
「ッ!」
椅子を掴みくるりと戻されたと思ったら首から下げていたID付きの社員証をぐいと引っ張られ、そしてさっき俺の唇に触れた指とは違うもので口を塞がれてーー
「ぁ、へ⋯⋯っ?」
突然の出来事に唖然としている俺の目の前で、今度は彼がペロリと唇を舐める。
その様子を見た俺は、無意識にごくりと唾を呑んだ。
「ん?ほら、やっぱりかさついてる」
「は⋯?」
「お前の唇。栄養と睡眠が足りてない証拠だバカ」
「バ⋯っ!?」
さっきまで不機嫌だった彼は何故か上機嫌で、そしてそのまま俺の首から社員証を外してしまって。
「あ!ちょっ、それ無いと出れないし入れないんですけど!?」
「知ってるっつの。ほら、ここから出たいならついてこい」
「な⋯っ!」
鼻歌を歌い出すんじゃないかと思うほどご機嫌になったらしい彼に戸惑いつつ、仕方なくファイルを保存しパソコンの電源を落とした俺は、鞄を掴んで慌てて追いかけー⋯
「それ、いつ返してくれるんですか」
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