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珍奇なものを見るように、見てしまったかもしれない。
忘れ続けていたあわただしい時間を悔やむのではなく、思い出したことを素敵と思え。
風が雨をとばすように、彼の心からも吹きとばされたものがあった。それが何であるのかは言い難い。
とにかく彼はまばたきをして、素直な感心を込めて言った。
「楽観だね」
「いい方を選んで勝手に幸せになるのよ。例えばね。ありがたいものに思えるもの。突然の雨も、降られることも」
「楽観的」
今度は揶揄するような言い方になった。返された言葉にも、多分に笑いが含まれている。
「勝手だもの」
胸を張り、澄ました顔でそう言った。
そして振られた手の動きに、目はまた街へと戻される。
改めて見ればとても遠くに感じられる街。
これだけの雨煙に遠近が狂ったのだろうか。決して交わることのない断固とした隔たりを、蜃気楼のような頼りなさを感じてしまっている。
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