風景論~雨

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 ざかざかと降る雨を、雨を受ける街を柵の向こうに見ている。グリーンの広がりを越えて向こうに。 見える範囲に人の姿はない。それぞれ目指した建物の中に落ち着いていることと思われる。予定通りに。  さて、彼の予定を打ち砕き、建物から引き剥がして天が下に連れてきた者が居る。 見れば彼女はぎりぎり濡れない縁に立ち、低い空を挑むような目で見ていた。 「強い降りになってしまってびっくり。かすめる程度かと思っていたのに、予想は全然外れたわ」 身を翻し、木の根にすとんと座り込む。 目指して駆け込んだだけのことはあり、ここはなじみの場なのだろう。選びも迷いもしないのだった。 「でも、あまり濡れなくて良かったわね」 フレディは笑い返し(かすかに)、彼女の横に腰をおろした。おかしなことになってしまったな、と思っている。
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