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「すごいわ、どんどん強くなるみたい」
感嘆含みで言うように、雨脚は限界を知らぬほどに激しさを増していた。
風もまた力を得、時折ざぁと四方辺りに吹き飛ばす。
けれどどれほど強く吹きつけようとも、樹の下に入り込んでくることはなかった。
距離だけの問題だろうか。
まるであかりが灯るように、彼の心に浮かび上がった言葉だった。
四方に伸びた木の枝は、たわわに葉をつけて撓っている。
初めて守られているという感覚を覚えた。
雨やどりをしているのだとの自覚も、遅れはしたがやっと。
「このまま水に沈んでしまったらおもしろいわね。木登りは得意? フレディ」
雨音を抑え、彼女の声は透るように聞こえた。
合間に水が葉に弾む、軽やかな音が入り込む。
「まぁ、……人並みに」
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