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「登れば少しは長く助かれるわ。私はあまり得意ではないから、手伝ってもらわなくちゃ。どこまで行けるかしら。あの枝の次には、あれをつかんで、それから次は」――
どこまでも上に登って行った。
実践ではないためほぼ手助けは必要なく、彼女は本当にどこまでも登ってしまった。おそらく空の方が近いほど。
フレディは途中から自分だけの夢想に入っていた。
枝の螺旋に引かれるように、醒めた記憶も渦を巻く。満ち溢れたそれは、迷う間もなく言葉となった。
「久しぶりだな」
「なにが?」
「木を内側から見上げたり」
まだ上を見ていた彼女が、静かにこちらに目を向ける。
「外で降る雨を見ているなんて。それも座って。見るならたいていは窓越しにだろう」
「部屋の中からね」
「傘も持たないし」
遮るものは何もなく。
「私は好きよ。雨の真ん中に潜り込んでいるみたい」
「いいね」
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