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知らない女性が顔を覗き込んでいて、自分の事を母親だと名乗った。
「だれ···?」
そんな私達の様子に疑問を覚えた医師からいくつか質問を受け、一時的な記憶の混濁があると診断された。
記憶喪失にはいくつか種類があるそうだったが、幸いにも自己紹介をされ写真を見せられたりすると少しずつ記憶がハッキリし、母もすぐ母だと思い出せた。
知らない男女が何人も来て、少し話を聞くと同じサークルの先輩だと思い出す。
思い出すキッカケは様々で、一緒に観た映画の話をした時だったり、誰かの失敗エピソードだったり。
小さなキッカケが記憶の欠片を呼び起こし、そんな様子を見てすぐに全ての記憶が戻るでしょう、との事だった。
隣のベッドには男の子がいた。
一緒に階段を落ち、なんと同じく記憶喪失になったらしい幼馴染みの男の子だった。
「大和君が庇ってくれなかったら娘はどうなっていたか」と両親は泣いてお礼を言い、「いえ、結局大和も一緒に落ちてしまいましたし、お互い本当に命に別状が無くて良かったです」とその男の子の両親も涙ながらに話していた。
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