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4.本音よりも、本心を
「何を⋯っ、と」
私の言った言葉の意味を図りかねたのか振り返ろうとした彼が慌てて顔を背けた。
“さっきまであんなに顔を見て本音で接しようとしてたのに⋯”
理解しきれてないなりに、精一杯誠実に向き合おうとしてくれていると思うと私の胸がほわりと温かくなる。
『一滴垂らせば素直になれる』魔法薬が必要だったのは貴方じゃなくて、私の方なのだからー⋯
「アカデミー時代からずっと憧れていたの、いつも凛として誰にも媚びずに突き進むその姿に。こっそりテオドールの軌跡を辿るくらい⋯」
ぽつりぽつりと話し出すと、彼がしっかり耳を傾けてくれている事に気付く。
そしてこれは、『今日だけ』じゃなくて。
「婚約した相手が貴方だと知って浮かれたわ。すぐにその気持ちは地に落ちたけどね!だってそうでしょ?口も態度も最悪だったんだから」
「う⋯」
“しがみついてて彼の様子なんてわからないけど、絶対今項垂れたわね”
なんて冷静に想像した私は、こっそり小さく吹き出した。
「⋯だけど、ガッカリはしなかったわ」
「⋯っ」
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