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男性相手に美しいはダメだったかしら、とちらっと彼の様子を窺うと、そこには真っ赤に染まった首筋があって。
「⋯一人だけ、『俺』じゃなく『俺の魔法』に憧れてくれていた子がいた」
「⋯え」
「近寄ってはこないが、よく彼女の視線は感じていて。こっそり俺が使った魔法を練習してるのも気付いてた」
「ッ!!」
“それ、もしかしてもしかしなくても私よね!?”
バレないようにこっそりと見ていた事も、こっそり真似していた事も。
よりにもよって本人にバレていたなんて!!
いきなり落とされた爆弾に一気に私も真っ赤に染まる。
しがみついたままあわあわしている私に気付いているのかいないのか⋯そのまま彼は話を続けて。
「不思議だよな、俺に群がる奴らが鬱陶しかったはずなのに、俺の魔法しか見ない彼女の目が俺自身を映さない事を不満に思うようになるなんて」
ははっと乾いた笑いを溢す彼は、どこか自嘲しているようにも聞こえた。
「⋯彼女が婚約者を探してるって聞いて、すぐに申し込んだよ。選ばれた時は本当に嬉しかった、まさか自分がこんなに拗らせていたなんて知らなかったからな」
「拗らせてる自覚があったの⋯」
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