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やけくそのように告げられるその『好き』が、魔法薬で強制的に聞いた彼の甘い本音よりも甘美に聞こえた。
“だから私も、ちゃんと私の本心を⋯”
「私も好き、ずっと、ちゃんと好き」
溢れさせるようにそっと告げると、パッと振り向いた彼の真ん丸になった黄目と目があって――
「⋯あぁっ、こんなにも幸せな事があるのだろうか?狂おしいほど愛おしい君からそんな囁きを貰えるなんて!」
「あっ、今そーいうのいらないわね」
言いながらお互いの語尾がどんどん低くなり、また深くなる眉間の皺ごと叩くように両手で彼の視界を塞いだ。
「ていうか、甘い言葉を言えば言うほど低くなる声色とその嫌そうな顔はなんなの?」
「そんなの、勝手に俺の本音が暴露されてんだぞ。嫌に決まってるだろ、俺が伝えたいのは剥き出しの本音じゃなくて、その⋯」
「?」
「ただ、クリスタを好きって事だけ、なんだから⋯」
「――ッ!」
視界を奪った私の両手を、視界を塞いだまま上から重ねるようにして右手で握ったテオドールは反対の左手で私を探す。
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