痩せると決めたらモテまして〜ジムで出会った筋肉イケメン御曹司はぽっちゃりな私への溺愛に悩まされているようです〜

10/60
前へ
/60ページ
次へ
* (ちょちょちょちょっ待てえぇーい) 時代劇みたいなセリフを心で叫んでいた。 (パフェーーーー!!!) ダイエットには天敵(←思い込み強)のパフェ! しかもチョコだと! 俺は、前に姉貴がいるのも忘れて、パフェを食べる白井さんに釘付けになってしまった。 ここ『vegeta』は、俺が経営するカフェだ。こうして時々、姉貴と提供される料理の味が落ちてないかを確認しに来るのだが。 「……ま、まさか全部食べる気じゃないだろうな」 聞こえないほどの小さな声が出た。だが微妙に震えてしまっている。俺はそれほどにショックを受けているのか? たかがパフェだろう。されどパフェだっつーの!! すると姉貴から、「昴? いい加減になさい? お嬢さんもお食事中ですよ。お邪魔してはいけないわ」と釘を刺される。 俺は普段からこの精神の屈強な姉貴には頭が上がらない。打ちひしがれながら、俺は運ばれたワインをがぶ飲みした。 だが待て。 目を細めてよーく見てみれば。 「もしかしてっ」 ガバッとメニューを取る。自分の経営する店ではあるが、メニューのスイーツは後回しにしがちであまり覚えていない。 白井さんの食べているパフェを確認してみると、『ミニパフェ 253Kcal』とある。 ふう。253(ニッコリさん)か。それなら許容範囲だ。 そうこうしているうちに白井さんはミニパフェを完食し、頭をぺこりと下げてレジへと向かう。店員が手を振って、支払いを拒否するタイミングを見計らって俺は立ち上がり、白井さんの後ろから声を掛けた。 「優里さん、ここの支払いは私がと伝えてあります。君がダイエットを頑張れるよう、私からの応援(←?)だと思ってください」 「そんな! 奢っていただくわけには……」 二人でやり取りをしていると、やたら白井さんがちらちらと視線を下げる。 ショーケース!! 「いいんだ! ここは任せてくれないか。さあ店を出よう!!」 白井さんの肩に両手を乗せ、ぐぐぐと押して、店を出る。 ふう。セーフだ。さらなる強敵ケーキからは遠ざけた。 だが帰り道はどうだ? この半径1キロ以内にはシフォンケーキ専門店と老舗和菓子屋があり、どちらもここら辺では名の知れた有名店だ。白井さんが、すすすと吸い込まれていく可能性は大いにある。 「優里さん、帰りは送らせてください」 スマホでタクシーを呼ぶと、ここで待っていてと言い残し、姉貴に「ちょい彼女送ってくるから悪りいけど支払いしといて!」と財布を投げつけ、戻った。 「あの……おお送っていただかなくても、ひとりで帰れますです。ほら! 柳田さんが仰っていた有酸素運動のウォーキングしながら、いっちにいっちにってね」 腕を振りながらぽよんと笑う顔に少し戸惑った。 「いやあの送って……今日はまあ、送らせてください」 ふんわりとした頬が、大福もちみたいで柔らかそうだ。ほんのり紅がさして、苺大福かなと思った。
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!

228人が本棚に入れています
本棚に追加