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「ふう」
ひと通りジムのプログラムをこなしてから、私は更衣室へと向かった。
フィットネスバイク、マシンによる筋トレ、ランニングマシンを繰り返すと大量に汗が出る。シャワーを浴びてから着替えをし、自宅に帰るのが日常。
その日もいつものように、更衣室へと歩いていくと、男性更衣室の入り口から1人の中年男性が出てくるのが見えた。私とすれ違い、少し遠ざかっていく。
「すみませんが、タオル……忘れてますよ!」
声でハッとした。
振り返ると男性の後ろを追って、あの有名人な柳田さんが出てくるではないか!
「あ、すみません。ありがとうございます」
「いえ、じゃあまた!」
男性に忘れ物のタオルを渡し、お互いが挨拶を交わす。
なんて良い人なんだ〜と、ぽやんと見ていると、柳田さんが戻ろうとしたところ、私に気がついたようだ。
「あ! 優里さん! こんにちは、こんな格好で失礼」
そうなんです。
柳田さんは下はスパッツと半パンを履いているが、上半身は半裸のまま。私はアセアセ目のやり場に困りながら、こんにちはと挨拶をした。
「優里さんはもうお帰りですか?」
「は、はい」
「私は今からです」
「……そうですか」
なんて他愛のないやり取りをしているうちに、ちらちらと柳田さんを見ていたら。
なんという完璧な身体の造形。盛り上がる筋肉、そして所々に浮かぶ血管や筋。ミケランジェロのダビデ像よりも荒々しいが、それほどムキムキではない、ちょうどいいくらいのスタイル。
はいこれ失神するやつー。
しかも長身で足も長いとなると、私がぽやぽやと眺めてしまうのもお分かりいただけると思います。
(なんて素晴らしい筋肉、肉体美なんだなあ)
めっちゃ理想のボディ。あ、ヨダレが。
「ところで優里さん、こんなことお訊きしたら大変失礼だとは思うのですが、優里さんはダイエット目的で通っていらっしゃる?」
「たた体型は、みみ見ての通りですから……もう少し痩せたいなと思いましまして」
どうしてもキョドってしまううぅ。
「そうですか。ビフォーアフターの写真ってもう撮られました?」
筋肉美の世界にどっぷりはまり恍惚に浸っていたけれど、色々話し掛けられてそこではっと自分を取り戻した。
「?? それはなんですか?」
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