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「ま、まあ、優里さんは確かにそのままでも可愛いですけどね。でもご自分で決めたことですもんね? そりゃ最後までやり切った方がいいですよ」
「やっぱそうですよね」
「なんか体型のことを揶揄われたりとかあるんですか?」
「いえ! それはないです。体型のことを言われたりは全然なくて。だからってこともないんですけど……言われたことがなかったから、今まで痩せたいなんて思わなかったんですよね」
「じゃあなんで今回痩せようと?」
「誕生日に……」
「はいはい。先月25歳になりましたね」
「え? どうして私の誕生日……」
「あ。……えっと私も30歳で歳が近いなって思ってなんとなく……なんとなくですよ? 覚えていたんです」
「?????」
「ははは。それで? 誕生日にどうしたんです?」
「はあ。誕生日にですね。ホールのケーキを買ったんです」
「ロウソク差して、ふぅっっ! いいじゃないですか!」
俺がふうって口をしたら、白井さんは俺の口元をガン見してくる。恐い恐い!
「ひとりで」
ぞっ。
まさか。
「私、実家出てひとり暮らしなんですけど、ひとりなのにホールケーキ買っちゃうメンタルとひとりで全部たべちゃう食欲に、慄いてしまって」
ホールをひとりで! そりゃ戦慄を覚えるわ!
「で、ダイエットを……」
「なるほど……か、彼氏さん呼ぶとか……」
「ひとりで食べました」
沈黙の時間が5分ほどあったと思う。俺はダンベルをいっちにっいっちにっと上下運動。白井さんはフィットネスバイクをシャーシャー言わせてペダルを漕いでいる。
そんな沈黙に耐えかねて俺は。
「ジムに来ない日は、有酸素運動、例えばウォーキングとかやるといいですよ。やってみてくださいね」
そうアドバイスしてから、更衣室へとフェードアウトした。
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