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「なんか柳田さん、引いてたなあ」
やっぱり誕生日にひとりでホールケーキってのが良くなかったのかなあ。
ジムの帰り道、コンビニに寄る。明日の朝のパンと低脂肪牛乳を購入、地獄のスイーツコーナーを脱出し、トボトボと帰路に着いた。
最近、甘いものを食べていない。誕生日にホールケーキを丸ごと食して呆然としたのち、我に返ってから食事以外の甘味を口にしていないからだ。
「もうそろそろ禁断症状が」
生クリームやソフトクリームなどの白いものが無性に食べたくなる。白いもの症候群ってヤツですね?
「頑張ってる自分にたまにはご褒美もいいよね。明日カフェにでも行って、ミニパフェでもたーべよっと」
それにしても。
(ホールケーキの話をした時の柳田さん、ふうぅってロウソクの火を消すあのお口、可愛かったなあ)
あまりの可愛さに思わずガン見してしまった。あの全身の素晴らしい筋肉がカチカチすぎて(触ったことはないが硬いはず)、そのギャップで唇がひじょーに柔らかく見えたのだろうか?
トリックアート的な。
なんてことを考えながら、家に帰った。
「パフェ、楽しみ〜」
パフェのことだけを考えながら、私は眠りに就いた。
翌日は休日。朝、太陽が昇るとともにパフェのことだけを考えながら起きる。
そしてお昼過ぎ、パフェのことだけを考えながら、パジャマから私服に着替えて、外出した。
地方雑誌に載っていて、かねてからチェックしていたカフェへと直行。中は広々としてオシャレな造りだ。テーブルについて、ミニチョコパフェを注文し、ふうと息をついてからお冷やを飲んだ。
と。
どこかから視線を感じる。
斜めに視線を滑らせると、なんとそこにあんぐりと口を開けた柳田さんがいるではないか!
え?え?
けれど、柳田さんはひとりではなかった。柳田さんの向かいには、女性が座っている。絹糸のようにサラサラなロングの髪が、まるでシャンプーのCMに出てる女優さんのようだ。花柄のワンピースにブランドのバッグ、赤いハイヒール。
後ろ姿ではあるが、華やかなオーラ、存在感がハンパない。立ち昇る匂いすら、高貴なものであろうと推測される。
柳田さんは、私を認めると、腰を浮かせてそろっと立ち上がった。
「ゆ、優里さん、こんなところでお会いするなん……て」
「こんにちは。ぐ、偶然ですね」
私も思わず立ち上がり、頭を下げた。すると、女性が振り返り、こくっとあごを打つ。
目が覚めるような美人だった。
(柳田さんの彼女かな……)
イケメンハイスペ筋肉祭りな柳田さんのお相手に相応しい女性だ。うっかり自分との差を思い知らされてしまうほど、その人はか細く、淑やかだった。
「お待たせしました」
ちょうどそこで、ミニチョコパフェが運ばれてきた。私は内心助かったと思いつつ座り直し、運ばれてきたスプーンを手に取った。
けれど。ちょと待て。
柳田さんがめっっっっちゃ見てる。凝視!!
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