痩せると決めたらモテまして〜ジムで出会った筋肉イケメン御曹司はぽっちゃりな私への溺愛に悩まされているようです〜

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「ぱ……ぱ、パフェを召し上がるんですね?」 「は、はい」 そうですがなにか? 柳田さんのひきつった笑顔が引っかかったけれど、私はチョコレートのソースがかかったソフトクリームにスプーンをそっと差し、掬った。 一口、口に入れる。すると、奇跡の甘さが口の中に広がっていった。舌の上でとろける至高。 「んーーー美味しいぃぃ」 思わず声に出てしまうほどの幸せ。ほっぺが落ちるというのはこのことだろう。白いもの症候群からの解放最高!! と、パフェを堪能していると。 え? 柳田さん? まだ立ってるしまだ脱力してるしまだあんぐり? 呆然と立ち尽くしている、という言葉がこれほどマッチングする姿もない。 どしたの? 「……パフェ」 はい。パフェですが? 2度目。 ガーーーーーンみたいになってますけど、まさか。 私がパフェ食べてるから? 太っちゃうから? まさか! 今までの努力が台無し! みたいな? 食べにくっっ。 「あの……今日はご褒美パフェを食べるという強い意思で来ているので……た、食べていいでしょうか?」 はっと我に返ったのか、柳田さんはイスをガタガタいわせながら、座った。 「もちろん! もちろんです! どうぞどうぞどうぞ!」 ダチョウクラブみたいになってますけど、こんな動揺した柳田さんを見たことがありませんね。 「昴? いい加減になさい? お嬢さんもお食事中ですよ。お邪魔してはいけないわ」 お相手の女性の一喝が入った。 「ああ。そうだね」 そこで、柳田さんたちが注文した品が運ばれてくる。 ワインに前菜、サラダにスープ、メインはステーキ、そしてカバンから出したもの。 (ぷ、プロテイン……は持参) ただ、少しだけショックだった。パフェを半分ほど食べたころ、もう一度、現実を直視することに。 ちらと横目で見る限り、それは完璧で麗しいデート。 ナイフとフォークで優雅にステーキを食す、美男美女がここに爆誕的な。 (はあぁ、なんか絵になるなあ。さっきのセリフ「お邪魔してはいけないわ」「ああ。そうだね」が似合うのなんのって) 柳田さんはモテる。知っていた。そして、美人な恋人がいる。それもきっとそうだろうなとは思っていた。 だから想像通りだっただけ。 視線を下げる。自分の下腹部には浮き輪。だが今はいい! 私は現実から目を逸らし、パフェをなんとしても完食すると強い意思を持って、底の方に残った、ふにゃふにゃなコーンフレークをスプーンでかき集めると、一気に口の中へと流し込んだ。 甘ったるさが、口の中にべったりと残る。 お冷やを飲んだ。 そして二人のお似合いすぎるお姿の残像を振り払うように「それじゃお先に失礼しますっ」と言って、レジへと向かった。 ずんずんと歩く。 柳田さんにアドバイスをもらってから、ウォーキングも続けている。早歩きは得意。 ずんずんと歩いた。
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