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「キャー柳田さんがいらっしゃったわ!」
「この時間に来るの珍しくない? それにしてもいつ見てもステキねぇ」
女性の黄色い声でスタジオが沸く。
私は持っていたダンベルを床に置き、首に掛けていたタオルで汗を拭きながら、注目の的の方へとちらと目を向けた。
「こんにちは! 皆さん頑張っておられますね」
身長185㎝、体重77kg(お姉様方の噂話より抜粋)均整の取れた見事な筋肉、そのシックスパックを見たことのある女性は、失神しかけたという噂まで。
「柳田さぁん、私、少し痩せたんです。どうですか?」
一人の女性が駆け寄っていき、手を合わせて目を輝かせている。
柳田さんは、ニコと優しく笑いながら、
「私が女性の体型について口にしたら、セクハラになってしまいますから……でも安井さんはいつ見てもステキな女性です」
「ほんとですか! 嬉しい!」
すると他の女性が、
「私もウエストが細くなったんです!」
「いいですね。どうやったらそんなスリムな体型を維持できるのか教えて欲しいくらいですよ」
「私も! 私も見てください!」
あっという間に人だかりだ。ジム『stone』の会員で有名人、柳田昴さんは嫌な顔ひとつせず、一人一人に甘い言葉を掛けていく。声を掛けられた女性は歓声を上げながら、ぴょんぴょんと大喜びだ。
「柳田さんは今日はお仕事は?」
「私は自営なので時間に余裕があるんですよ。今日はもう仕事は終わらせてきました」
「自営なんですか? 何をされてるんですか?」
これほどのイケメンとなれば、皆興味津々になる気持ちもわかる気がする。
「ははは肉体労働ですよ。こうして身体を鍛えているのはその為でもあるんです」
私は遠くから、そんなキラキラした世界をため息混じりに見ていた。
(私には縁遠い世界だわ)
改めて自分の腹回りに手を置いた。ぷにぷにと揺れるお腹の脂肪。
自分ではぽっちゃり系だと思いたいけれど、はたから見れば完全なるおデブなのかもしれない。
「はあぁ」
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