3章 御用達サロン

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美容師さんは 僕の髪をほんの少しづつとって スプレーをかけながら 素早い速さでアイロンを当ててゆく。 すると美容師さんの触ったところは 艶々な毛束になって それが重なると流れができてゆく。 僕が勝手に染めて、 オレンジ色に褪色した茶髪が 漫画の中の男の子の髪が 風で揺れてるみたいに仕上がってゆく。 まるで魔法だ。 ヘアが仕上がると、次は眉毛。 僕の生まれたままの眉毛は ハサミでカットされ 描かれたように整った。 そしてファンデーション、パウダー 唇にはけっこう鮮やかなグロスが乗せられた。 元々色白で 陽に当たると肌が赤くなるから 紫外線ブロックだけは気をつけてたけど こんな丁寧なメイク、 トンとしたことない。 「どうですか?」 美容師さんは鏡越しに訊いてきた。 げげ!なんじゃこりゃ〜! 性別不明、年齢不詳… 男の子に見えなくもなく スナックのママ?に見えなくもない。 「す、すごいです…けど 逆に、だ、大丈夫ですか僕?」 美容師さんは イケメンですよ、と頷いてから 「輪郭が女性的なので あんまり作りこむより ナチュラルに仕上げた方がカッコいいです。 でもシャツのボタンは 上まで留めた方がいいですよ 見えちゃうよ、上から」 と小声で付け加えた。 ヤベ! ほとんど無い胸だけど シャツの襟開けすぎると。。。 ってか、美容師さんにはバレてた⁈ 「あのーバレました? 支配人にまだ黙っとけって 言われてるんです」 「了解👌 でも歌舞伎町には 他にもいるよ、男装ホスト」 へ〜! そうなんだ! 奥深い世界だなあ… サロンを出たのは午後6時。 歌舞伎町は人通りが増えてきた。 僕は小っ恥ずかしくて 下を向いて、店に戻った。
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