6章 高級品か、安物か

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これ、だめなんだ! 僕は自分の足をピッタリ包んでる ユ○クロの黒スキニーを見下ろした。 僕のファッションがこうなったのは つまり、男物ばっかりになったのは 基本お金がなくて 息子の服を着るようになったからだ。 中学1年で 息子は僕の身長を追い越した。 ドンドン成長する息子の服は ドンドン家に溜まっていった。 子供の頃からオシャレさんだった息子は お小遣いやバイト代で 流行りの服を センスよく着こなしていた。 それは僕の楽しみでもあり 自慢でもあり 自然、ボーイズファッションに詳しくなって 自分でも着るようになった。 元々、女にしては背が高く痩せてる僕は それが割に似合うらしく 女の格好をしてた時より 褒められるようになった。 髪も手入れが簡単なショートになり 息子の影響で自由に染めた。 ということで いつのまにか僕は 「男装熟女」になったわけだけど ブランド品や高い服には縁がない。 「すべからく《最高級品》になれって… 一体どうすりゃいいんですか?」 「今のところは 今日みたいなシャツとスキニーでいいよ シャツはもう少し柄モノとか バリエーション増やせ。 ヘアメイクはサボるな。 こないだ行ったサロンはホスト専用で 割安だから、毎日出勤前に寄って きちんとヘアメイクしてもらえ」 と、タイガさん。 へー あそこ ホスト御用達美容院なんだ。 「アクセサリーは どんなのつけたらいいんですか?」 タイガさんは 僕の耳に下がった十字架をチラリと見ると 「金が貯まったら まずブランド物を1個買え。 売れるための初期投資」 と言った。 よっしゃ!買うぞブランド品! それには…まず、売れなきゃ! あああ~ まるで「卵と鶏」
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