28章 「夢を売る」とは…

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28章 「夢を売る」とは…

ホストは、よく 「夢を売る」のが仕事という。 冬人さんのバースデーイベントの夜 ヘルプについてた僕に エースのみさきちゃんは 問わず語りに話してくれた。 「冬人はね カレシでもないし、恋人でもない あくまで『担当』 それ以上でもそれ以下でもない。 でも『担当』は いないと困る。 カレシは 心が離れたら終わりじゃない? 『担当』は 私がお金払ってる限り 売掛があるかぎり 私の『担当』だよね。 冬人も、私がいないと困る。 私、小学校1年生から施設で育って 親も居ないと同じだし 私にとって、いないと困る人って 今まで出会ったことなかった。 お互い 居ないと困るって すごく安心なんだよ」 売掛というのは いわゆる「ツケ払い」のこと。 高額の支払いはツケにして 後から分割で払うことができる。 みさきちゃんにとって 冬人さんは、 やっぱり生きてゆくのに必要な存在らしい。 ホストが売る夢って… 夢って何だろう。 僕は女の子に ステキな夢を売りたい。 冬人さんのアドバイスもあって 僕は営業に少し力が抜けてきた。が 疲れが溜まってきたのも事実。 特にヒカリちゃん。 気分のムラや アフターの執っこさに参ってる。 ヒトコトで言うと メチャクチャ重い。 「女の子がホストに執着して 嫉妬したり、張り合ったりしてくれなかったら この商売アガッタリなんだよ」 とタイガさん。 「それはそうっすけど 僕、ヒカリちゃんに対して すごーく嫌なことが 一つだけあるんですよ……」 「なに?」 「それがぁ…… エッチするたびに おしっこ漏らすんです」 「はい?」 タイガさんも周りにいたホストたちも 話に食いついてきた。 まったく、好きだなあ。。。 「する前に おしっこ行っときなって 僕も言うんですけど ダイジョブ、っていうんだけど いざ始めると漏らすんです。 めっちゃイヤなんですよねー なんか病気ですかね?」 「それさあ… おしっこじゃないんじゃない?」 「え? じゃ、なんなんですか あのピッて出るやつ?」 「最中でしょ? それ潮だよ、潮」 「… シオってなんスカ?」 「オマエほんと… なんも知らんのな  でも毎回って タローすごいね!👍 …… …… ねえ、どこをどうやるの?」 タイガさんが白目勝ちの流し目で 訊いてきた。 タロー 「どこをどうって?」 冬人 「だーかーらー ち〇こないヤツに 教えを乞うんじゃねーよ!」 タイガ 「それな~!」 冬人 「タローいいなあ。。。 なんか切ないセッ◯スしてんな~ 俺なんか、殺伐としてっぞ」 冬人さんとタイガさんは 遠い目をして黙った。 「シオ」のことは 検索して分かったけど… う~ん、だとしても僕の悩みは 全く解決してない。 凄いとか言われても別にうれしくないし 凄いのは僕じゃなくて そんな体質の ヒカリちゃんの方なんじゃないだろうか。 女の子に「夢を売る」のは大変だ。 僕の暗い顔を タイガさんは今度は真面目な お仕事モードの横目で見ると 深くうなづいた。 これは、任せておけ、という意味なのか。
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