オープニング

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オープニング

 T県T村の呪道に行ってみた!  そんなタイトルの動画がバズったのは今年の五月。投稿者によると呪道(じゅどう)は『通らずの道』と呼ばれていて、村民は誰ひとりとしてその道を通らないという。呪道を歩くとその道に眠る死者が呼び起こされ、土の中からにょきっと手が出てきてひきずりこまれてしまうらしい。  動画には投稿者が呪道を実際に歩いている映像が映っている。山道なのか、辺りは鬱蒼と木が繁りみるからに恐ろしい。そんな道をカメラマンをひとり連れ、投稿者が興奮気味に喋りながら歩いている。異変が起きたのは歩きだして三分ほど過ぎた頃。  歩く投稿者の真下から、ずぼっと人の手のようなものが出てきて、投稿者の足を掴んだように見えた。叫び声が響きわたり、画像が乱れる。転げるようにして走る投稿者をカメラが追いかけ、動画はそこでフェードアウトした。  のちに投稿者は後日談として新たな動画をアップ。神妙な顔で右足を掴まれた、あれは完全に人の手だったと話していたが果たしてそれは本当だろうか──。
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