オープニング

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「ということで、僕たちスリーピースもT村へとやってきました~!」  いつもの決めポーズ、指を三本だしてからの裏ピースを決め、僕とマコトはパチパチと手を叩いた。  僕たちは大学生三人組のMeTuberで、主にオカルト関係の動画をアップいている。チャンネル登録者数は約二万人。まったく人気がないというわけではないが、誰もが知る大人気配信者というわけでもない。  そんな微妙な現状を打破するために、僕たちは夏休みを利用してT村へと赴き、二ヶ月前にバズった呪道動画の後追い取材をやろうとしている。 「まず、どうして呪道……通称『通らずの道』ができたのか。その真相に迫ってみたいと思います!」  オープニング映像を撮り終え、カメラ担当のユウキがふうとため息をつく。僕もマコトもユウキもすっかり汗だくだ。  東京と違い遮るものがなにもない自然豊かな村では、どこにいても隙間なく太陽が照り付けてくる。ジージーとセミの鳴く声。田んぼで作業をしている村人。子どもたちは夏休みなのか、暑さをものともせず、そのへんを駆けずりまわっている。 「それじゃあ、おじゃまさせてもらおうか」  汗を拭いながらマコトが言う。  須山(すやま)と表札のかかった家。今から僕たちは、この家に住む『アキばあ』こと須山(すやま)昭子(あきこ)さんから話を聞くことになっている。  Tシャツを濡らす汗が気持ち悪い。クーラーがあるといいのだけど。  そんなことを思いながら僕たちは須山邸の門をくぐった。
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