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第0章 序章。
郭鳶
字は美雨。
雹華「…郭皇太后様、
どうなさいましたか?」
郭鳶は夫だった曹叡が建設した
蒼穹之宮で無駄に豪奢な装飾に囲まれながら虚しさを抱えつつ何とか生きておりました…。
そんな郭鳶に仕える女官の1人が
戦争孤児でもある雹華になります。
雹華の父親は夏侯淵…字は妙才に仕えていた兵士で名を破浪と言うのですが西暦219年定軍山の戦いで命を落とした主君に殉じて討ち死にしました。
最愛の夫を喪った雹華の母親である巧玲は…産まれたばかりの雹華を連れて王朗の元を尋ね侍女として働く事を決めました…。
それ故に郭鳶と雹華は身分こそ違えどまるで姉妹のように暮らしていました
郭鳶「雹華、すまぬ、
案じさせてしまったようだな…」
実家である王家と縁が切れた郭鳶にとっては雹華だけが心の支えでございました。
曹叡「美雨は誰よりも…
何よりも美しい…」
生きていた頃、
目を細めながら郭鳶を誉めていた
曹叡はあっという間に短い人生を終えてしまいました…。
郭鳶「…私の生きる意味は…
結局何なのだろうか?」
郭鳶は王朗の孫娘として産まれましたがその人生はある男に愛されたいと希うばかりの他人軸な人生でした。
それと…
曹叡の后となった郭鳶は司馬師の正妻だった紫とは身分が違い夫を喪ったとしても再嫁する事は許されない存在。
何故ならば…
魏国の象徴たる存在だった曹叡…字は元沖から寵愛されていた事もあり曹叡亡き今では曹叡の代わりとして皆から敬われる存在となっていたからです。
曹奐「母上、どうしてそのように
悲しい言葉を口になさるのですか?」
曹芳…字は蘭卿と日を同じくして産まれた双子の弟である曹奐…字は景明は母親である郭鳶を悲しげな瞳で見つめておりました。
郭鳶「そんな…瞳で私を見ないで!
あの女さえ居なければ…!」
郭鳶…字は美雨の心を怒りで染めるのは…
司馬昭「紫がいればこの人生も悪いものではないと胸を張って言える…。」
郭鳶がこの世に存在する意義でもあった司馬師…字は子元の同母弟・司馬昭…字は子尚の寵姫として隣に存在している紫の存在でした。
郭鳶「司馬兄弟2人に寵愛されるだなんて…あの女がこの世に居なければ…私は幸せになれたのに…憎い…!」
時は西暦263年08月08日。
今は亡き司馬師への想いに
今も胸を焦がしている郭鳶…字は美雨の元にある男が現れました。
それは…
鍾会「皇太后様がお望みならば…
あの女を司馬家の元から奪い去る事も可能ですよ?私の才さえあれば…」
既に自らの才に溺れ…自分がいま、何をすべきかすら見失っている鍾会…字は士季でした。
鍾会「司馬家の前当主だった司馬師は自らの命尽きた後、当主となる司馬昭の事を考え自らの寵姫である紫と自らの忠臣である賈充…字は公閭をそのまま司馬昭へ下げ渡しました。」
鍾会は司馬師が命尽きた後、
司馬昭の家臣として自らの才が必要となる日が必ず来るだろうと考えていたのですが…
賈充「紫の命令で俺がそのまま司馬昭の家臣として側に仕える事になった。俺と紫は長年の付き合いだから…」
司馬師の遺言と紫の推薦により
賈充はそのまま司馬昭の謀臣となり…
鍾会『出世の機会を司馬家に潰される事になるとは…』
鍾会は出世の機会を司馬家により潰され司馬家と賈充を憎んでいました。
郭鳶「こうなったら…あの女を…」
鍾会「表舞台から消して…
司馬家に復讐を果たしましょう…」
その明くる日の丑三つ時〈=夜中3時〉
司馬昭の寵姫である紫は、
忽然と姿を消したのでございます。
司馬昭「紫…。いつまで寝てる?」
紫の最愛だった司馬師の同母弟で
今はもう1人の最愛となっている司馬昭が朝になっても起きて来ない妻の身を案じ居室を見に行ったところ…
司馬昭「紫が…消えた!」
紫は忽然と姿を消しており、
室内は荒らされておりました。
司馬昭「紫…どこにいるんだ?」
この異変は賈充…字は公閭を始めとする司馬家の関係者全てにすぐ知らされました…。
司馬炎…字は安世
司馬炎「母上を守りきれぬとは…
それでも父上の同母弟なのですか?」
実の父親である司馬師の事を誰より敬愛していた司馬炎は母親である紫を守りきる事が出来なかった養父・司馬昭に詰め寄りました…。
司馬昭「今はそれより紫を連れ戻す事こそ先決であろう…」
賈充「紫は司馬家に繁栄を齎す存在であるからこそその行方はどんな手を使ってでも探し出す必要があるのだ…」
司馬昭の決意をそっと後押しするかのような賈充の言葉に司馬昭は頷きました…。
司馬攸「今は養父殿と公閭の言う通り母上の居場所を見つけ連れ戻す以外に方法はありませぬ…」
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