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西暦2024年05月11日。
紫がひっそりと三重県にある平和な漁村で姿を消した日から時代と国を隔てた古代中国に存在する魏の国では…
紫にとって運命の人だとはっきり宣言するべき男性がいました。
それは…
時は西暦226年03月03日時点で
18歳となり元服〈=現代の成人〉を
迎えた司馬師…字は子元。
司馬師「子尚、我ら兄弟は既に元服を迎えた身であるが故司馬家の威厳を損なってはならぬ…。それは理解しておるな?」
司馬師は司馬懿と張春華の嫡男であり容姿端麗で文武両道というだけでも十分モテる要素がありました。
それに…常日頃から冷静沈着な態度をしている年齢の割には落ち着いたこの男は皆からたくさん期待されていました…。
司馬懿「ふむ、さすがは子元よ。
司馬家の男子としてどうあるべきかを理解し尽くしておる…」
司馬懿と張春華からは期待と愛情の全てを注がれているものすごく優秀を極めた人物である司馬師…。
張春華「やはり司馬家の明日を託すのは子元しかおりませんね、旦那様。」
そんな兄といつも比べられる
悲しい運命の弟が
司馬昭「眠たいのでどこかで居眠りしても構いませんか?」
15歳になり元服したものの…
どこかまだ幼さの残る司馬昭…
字は子尚でした。
司馬懿「子尚、少しは子元を見習い
大人の男性らしい立ち居振る舞いを学ばなければならぬぞ…」
張春華「申し訳ありませぬ、旦那様。私が至らぬせいでございます…」
司馬懿と張春華はあまり気の合わない夫婦でございますので普段は別居してはおりますがこの日は司馬昭の元服を祝うために家族でお祝いしていました
司馬昭「母上の作られた点心は、
何よりも美味でございますね…」
すると…
張春華「小篭包よ?どうして何でもかんでも点心とひとまとめにするのかしら?旦那様に似たのかしら?」
張春華は不思議そうな顔をしながら
司馬懿を見つめていました。
司馬懿「えーい!小篭包も点心ではないか?子尚、いちいち私の真似をするでないわ!」
司馬懿は張春華からの指摘に
逆ギレしてしまいそれを見ていた
司馬昭は…
司馬昭「…面倒だな…。
やっぱり昼寝している方が楽だな…」
余計、色んな意味で
やる気をなくしてしまいました。
すると…
華歆「取り込み中申し訳ないのだが、仲達殿、陛下が仲達殿と子元殿をお呼びなので参内して貰おうか。」
華歆…字は子魚が魏の皇帝からの勅使として司馬懿の屋敷へと参りました。
司馬懿「子魚殿、陛下がお呼びとは…如何なる御用件でございますか?」
突然、皇帝から親子での呼び出しにさすがの司馬懿も動揺しましたが…
華歆は大体の予想がついているようで
苦々しい顔をしながら呟きました。
華歆「大抵、
あの方のわがままであろう…」
華歆の思うあの方とは…
曹樹「ハクション!誰かしら?
私の悪口を言うのは…?全く!」
現在、魏の皇帝として国政を取り仕切っている曹丕の従妹に当たる曹樹…字は神美でした。
曹丕「神美、そんな事などどうでも良いが…朕がどうして媛容の仲人などを引き受けねばならぬ?」
曹操の次男で産まれた時はその覇道を継ぐ宿命になかった曹丕…字は子桓。
曹樹「私の悪口を言うなど陛下の悪口を言うのと同じではありませんか?ですから…どうでも良いなんて事仰せにならないで下さりませ…」
もう既に形ばかりの皇帝となっていた
献帝〈=劉協〉に皇位を禅譲させた上で即位した魏国にとって初めての皇帝とはなるのですが…
曹丕「朕とそなたは同じではない。
つくづく面倒な女だ…」
曹樹「陛下、子元殿は曹魏の中でも鬼才と呼ばれる程の才能を持つあの方の嫡男なのですから…ね?」
曹操の次男である曹丕と曹操の姪である曹樹は従兄妹同士ではあるものの…
その関係性は極めて奇妙なものでした
曹丕「神美、いい加減にわがままが過ぎるのではないか?」
曹丕は従妹を窘めたりその行いに対して苦言を呈したりはするのですが…
それ程説得力はありませんでした。
何故なら…
曹樹「…伯仁様に対してやり過ぎたと陛下は仰せでしたが私が蔑ろにされても平気だと仰っているのと同じです。」
曹丕とは身分違いの親友であり
今は亡き夏侯尚…字は伯仁が、
曹樹…字は神美という正妻がありながら…吞み屋の店員である静にひと目ぼれしその愛を一身に注いだ事が全ての始まりでした
曹丕「朕も激情が動かすまま過ちを犯してしまったのだが伯仁がまさか…あれ程までに庶民の女性を寵愛しているなど知る由もなかったのだ…」
曹丕は兄弟仲がお世辞にも良いとは言えず何でも曹丕の事を頼りにする従妹の曹樹を実の妹であるかのように溺愛していた事もありまして…
曹丕はその怒りの矛先を夏侯尚ではなく…その寵姫たる静に向け、刺客を放ちまさかの一般市民を…
暗殺してしまいました。
しかし…
曹丕からすれば…
『恐らく…静さえいなくなれば神美の元に伯仁は戻るだろう…』という思いからでしたが…その行動は裏目に出てしまいました。
夏侯尚「…静、静、
俺も必ず君の元に逝くよ。」
心に深い傷を負った夏侯尚は、
食を絶ち西暦226年02月11日。
静の元へと旅立ってしまいました。
これにより曹樹は結果として夫の寵姫と自らの夫を死へと誘ったとして魏の国最強の悪女というレッテルを貼られてしまいました。
曹樹「伯仁様があのような終わり方をなさったが為に私は非情な嫁というレッテルを貼られたのですよ!」
曹樹は今は亡き夏侯尚の事よりも
自らの名誉を回復するために
娘である夏侯徽…字は媛容を魏国期待の新星である司馬師の許嫁にする事を切に願っていました。
と言うよりも…
曹樹「許嫁よりも今すぐ子元殿との
婚姻を結びたいくらいですよ…」
曹丕と曹樹が何やら討論をしていると
華歆「仲達殿と
子元殿をお連れしましたぞ…陛下。」
司馬懿と司馬師が華歆に連れられ…
曹丕の館である蒼竜峡之宮へと到着。
司馬懿「司馬仲達が、
陛下に拝謁致しまする…」
司馬師「司馬子元が、
陛下に拝謁致しまする。」
曹丕の居室である蒼竜峡之間の前で
ひと言声を掛けてから曹丕からの許可が出るのを待っておりました…。
すると…
曹丕「1人見苦しいのがおるが
それでも良ければ入るが良い…」
曹丕が疲労困憊と言わんばかりの疲れた声で2人に入室の許可を出しました
曹樹「陛下!見苦しいとは無礼です。
そもそも…」
曹樹の大きな叫び声が聞こえる中、
司馬懿と司馬師が曹丕の居室に入ると
曹丕「…神美、
この辺りにしてはくれぬか?」
曹丕の隣に立って文句を山のように
言い続けている派手めな美女・曹樹…字は神美と…
曹樹「陛下…そもそも…大体…」
曹樹の後ろに控えている控えめでどこか儚げな印象を感じる女性がいました
夏侯徽「…母上様、
陛下に対して無礼でございます。」
曹丕「そうだ、媛容。朕が許す故
この見苦しい者を叱っても良い。」
この時代、親に逆らってはなりませんが皇帝の許可が出たので問題はなく…
それよりも…
司馬師「恐れながらその女性は、
どなたでございましょうか?」
すると…
控えめな娘とは対照的な少々?
出しゃばりな母親が…代わりに答えたまでは良いものの…
曹樹「さすがは子元殿、その娘こそが私と伯仁様の間に産まれた媛容です。私に似て美しいでしょ?」
少々?どころの騒ぎではないくらい
自意識過剰な母親に関しては
曹丕が頭を抱えておりました。
曹丕「神美、止めろ。宗家の品位を下げてはならぬと父王より言われ続けて来た事を忘れたか…?」
過去は曹樹の事を溺愛していた
曹丕ではありますがそれとこれとは別
図々しくなりはじめていた最近の曹樹に対してはあきれ果てるという想いが先行しておりました。
すると…
夏侯徽「母上様、私は父上様の事を尊敬しておりました。ですが母上様が今なされている事は己の名誉の為でしかありませぬ…。ならば私は…」
夏侯徽は今は亡き父・夏侯尚より賜りし蝶の飾りが付けられた懐刀を取り出し自らの髪を切りました。
曹樹「…出家してしまえば殿方と
縁組する事など許されぬのですよ?」
あ然とする曹丕の隣でこちらも大きな口を開けたままぼう然としていた母の曹樹は今にも泣き出しそうな声で娘がした行動について問いを投げ掛け…
突然拒絶された司馬師は、
司馬師「媛容殿は、
それ程までに私が嫌いですか?」
こちらもその行動の意味を
夏侯徽に問い掛けました。
夏侯徽「私は私の道を行きたいのです。誰にも振り回されず我が道を…」
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