58人が本棚に入れています
本棚に追加
“ごめんなさい、ダメなメイドでごめんなさい”
「坊っちゃんは本番を、はじめての相手を大事にされると仰っていたのに、本命のご令嬢と本番をしなくちゃいけなかったのに」
坊っちゃんのその意向を知っていたのに。
「嬉しくて、やめてって言えません……」
ぽろぽろと溢れる涙。
親に捨てられた時でさえ涙なんて出なかったのに、私は今まさに恩を仇で返しているというのに、喜びから涙が止まらない。
「俺のにしたいって言っただろ」
「11年前のあの日から、私は坊っちゃんのでした」
「これから先の未来も全部、俺のにしたいんだ」
“これから先……?”
「だから、その……、つまりそのっ、あ、愛してるって言ってるんだ!」
「愛、して……?」
坊っちゃんの言葉を呆然としながら繰り返す。
愛してる?私を?
「言質も取ったし、既成事実も作った、あとはイメルダの同意だけなんだが」
「私の?」
「俺と、結婚して欲しい」
結婚、私が、坊っちゃんと?
ぽかんとし、あんなに溢れていた涙がぴたりと止まる。
お仕えしている主とメイドの私が結婚だなんて、そんなことあり得ないとわかっているのに。
最初のコメントを投稿しよう!