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天沼さんとやえちゃんの交番日誌
◇3/16(土)地理案内-1件 担当:天沼三弥
「おまわりさん!」
「お嬢ちゃん。こんな遅くにどうしたの?」
「お家に行く道、分かんなくなっちゃったの」
「そっか。迷子になっちゃったんだね。お家の目印とかって分かるかな?」
「近くに、ヘビさんの公園がある」
「それはきっと笹名公園だね。公園まで行ったら、お家は分かる?」
「分かるよ!すっごい近くだもん」
「ヘビさん公園は、まず、ここをずーっと真っ直ぐに進む。そうしたら、カラフルなお花が描かれてる大きな看板が見えてくる」
「それ知ってる!水重フラワーパーク!」
「お嬢ちゃんすごいね。そこの看板を右に曲がっていくと、ヘビさん公園に到着だよ」
「分かった!おまわりさんありがとう!」
「お嬢ちゃん、お名前は?」
「わたし、かさいやえ!」
「そっか。やえちゃんか」
「いいお名前でしょ!」
「うん。とってもいい名前だと思うよ」
「ふふふ!」
「それじゃあ気をつけてね」
「うん!おまわりさん、じゃあね!」
◇5/1(火) 遺失物・拾得物-1件 担当:天沼三弥
「おまわりさんっ!」
「おおっ。やえちゃん」
「こないだは、ありがとうございました」
「いいんだよ。あれがおまわりさんのお仕事だからね。今日はどうしたの?」
「あそこでお財布拾ったの」
「ちゃんと届けに来てくれたんだね」
「財布を拾うと、天使さんと悪魔さんに会えるんでしょ?」
「そうだよ。頭の中に出てきて問いかけてくるんだ。財布を盗むか、届けるか。って」
「だから、やえも会えると思って拾ってみたの」
「ここに来てるってことは、天使さんが勝ったのかな」
「ううん。違うの」
「どういうこと?」
「悪魔さん、いなかったの。せっかく会えると思ったのに、天使さんしかいなかった」
「ははっ。やえちゃんはすごいね」
「悪魔さんに会いたいのに!」
「やえちゃんは、一生会えなそうだね〜」
「なんで!おまわりさんのばか!」
◇8/22(日) 地理案内-1件 担当:天沼三弥
「プールの道、忘れちゃった」
「浮き輪がまぶしいね。市民プールでいいのかな?」
「うん!市民プール!」
「ここを出て、まず左に進む。そうしたら、大きい銅像がある。剣を持ってる男の人」
「それ、知ってる。志賀郷太郎でしょ」
「やえちゃんは、頭いいんだね」
「ふふ。やえは、秀才だからね」
「で、その銅像の後ろには小さい川があって、その川に沿ってずっと進んでいく。そのまま進めば、前に水色の大きいスライダーが出てくる。それが市民プールだよ」
「ありがとう!おまわりさんの分まで、いーっぱい泳いでくるね」
「うん。よろしく頼むね」
◇12/22(月) 地理案内-1件 担当:天沼三弥
「冬季講習っていうんだって」
「やえちゃんは、えらいね」
「先生厳しいから、イヤ!」
「お勉強は大事だよ。さぼらないでちゃんと行かないと」
「行かない。今から行ったってもう遅刻だもん」
「すばる塾までなら近道があるよ。なんとここから4分で着いちゃう」
「4分なら間に合うけど…でも、もう行かないもん」
「お母さんになんて言うの?嫌だったからさぼったって言うの?それとも嘘つくの?」
「んん…」
「やえちゃんは、秀才だもんね?」
「そ、そうだよ?やえは、秀才だからへっちゃらだよ」
「あそこのコンビニの駐車場の右脇に、細い道が長く伸びてるんだ。そこを駆け抜けたら、あら不思議。目の前にはすばる塾だ。さあ、いってらっしゃい」
「ふ、ふん!」
◇4/16(火) 地理案内-1件 担当:天沼三弥
「おっ。やえちゃん制服似合ってるね」
「可愛いよね!さざみ中の制服」
「エコバッグ片手に、今日はお買い物?」
「そう。お母さんにおつかい頼まれちゃって」
「それでスーパーの場所を聞きに?」
「そうなんだけど、余った分はお小遣いでいいんだって。だから、おまわりさんに激安のスーパーを教えてもらいにきたの」
「さすが、賢いね。激安スーパーなら、交番を左に進んだ所の大通りに、ヒマラヤっていうのがあるよ」
「ヒマラヤ。なんか、安そう」
「でしょ。きゅうり1本、10円」
「それ、本当にきゅうり?」
◇9月28(土) 地理案内-1件 担当:天沼三弥
「やばい。緊張してきた」
「1年生でいきなりメンバー入りなんて、やるね」
「わたしのせいで負けたら、どうしよう」
「大丈夫だよ。やえちゃんは、実力を認められてメンバー入りしてるんだから。とにかく全力。新人ルーキーやえちゃんの役割は、まず、元気を振り撒くことだよ」
「そうだね。元気で全力。おまわりさん、ちょっと大きい声出していい?」
「どうぞ」
「めーん!!どーう!!こて!!」
「魅力的な声だね」
「あの、いつの間にか時間ギリギリになっちゃってたから、水重市民体育館までの近道、教えて?」
◇12/25(金) 地理案内-1件 担当:天沼三弥
「なんだか、気合い入ってるね」
「なんてったって、クリスマスデートだからね」
「やえちゃん、彼氏できたのか」
「中学入ったらモテモテでね。全く、つかれちゃうんだからっ」
「どんな男?」
「なんかおまわりさん、目が怖ーい」
「別に聞いただけでしょ。どんなやつなの?」
「教えませーん!」
「へえ。そうですか。どこいくの」
「水重フラワーパークだよ」
「あそこまでの道、複雑だけど大丈夫?」
「覚えてきたけど、一応、聞いとこうかな」
「教えませーん!」
「最低!おまわりさん失格!」
◇10/5(木) 地理案内-1件 担当:天沼三弥
「この時、たかしくんの歩いた道のりは何kmですか。っていう問題」
「これはおまわりさんの仕事外です」
「道の問題だから、ほぼ道案内みたいなもんでしょ?ほら教えて教えて」
「力技がすぎるよ。いやあ、教えるっていってもね」
「もしかして分かんない?中学3年生レベルの問題だよ?あれれ?」
「分かりますけど。ほら、まずここをこうやって、足して、引いて、割って、かける」
「全部やってるじゃん」
「1200km」
「答えデカすぎ!」
◇4/18(月) 地理案内-1件 担当:天沼三弥
「あ、制服変わった。ついに高校生?」
「女子高生のやえです」
「よろしく。女子高生のやえちゃん」
「なんか、スケベ」
「繰り返しただけでしょ」
「私ね、ギリギリまで眠りたいの。だから高校までの最短ルートをお願いします」
「もうその思考なんだ。1年生の間くらいは、真面目な早めの登校がおすすめだよ」
「そんな教えは頼んでません。最短ルートをお願いします」
「けっ、可愛くないな」
「はいスケベ発言!逮捕!すぐに逮捕して!」
「ちょっと、変な目で見られるからやめて!」
◇9/17(水) 遺失物・拾得物-1件 担当:天沼三弥
「これ本当に落とし物?後ろに"葛西八咲"って書いてあるけど」
「クラスの子に破られたから、私がそこの道に捨てた。で、それを拾って届けにきた。だから落とし物」
「なんで、破られたの」
「秀才ぶってて、ムカつくんだって」
「こんなことされたなら、先生に言いなよ」
「言わないよ。こんなことされて崩れるほど、お母さんにやわに育てられてないから」
「強いね。お母さんも、やえちゃんも」
「いざって時は、おまわりさんがいるし。警察には誰も逆らえないでしょ?」
「もちろん。無理やりにでも逮捕してあげるよ。天沼のオリジナル罪法で」
「どんな内容?」
「麗しの葛西八咲を傷つけた罪」
「ごめん。ちょっとキモすぎるかも」
「そりゃないよ」
◇7/23(金) 地理案内-1件 担当:天沼三弥
「とりあえず大学行ってから考えてみれば?」
「それ、みんなにも言われた。でもそのやり方嫌なんだよね。微妙に足浮かせた状態で、進みたくない」
「言いたいことはすごい分かるよ」
「だから道案内してよ。私の、将来の道案内」
「相変わらず力技だね。なにかやりたいこととかないの?」
「実は…ちょっと考えてるのが」
「え?なになに?」
「笑わないでね」
「もちろん」
「歌を、歌いたいなって」
「めーん!!どーう!!こて!!」
「急にうるさい!」
「いや、やえちゃんが前に交番でこう叫んだ時、魅力的な声だなって思ってたんだよ」
「そういえば、あったね」
「応援するよ。少しびっくりしたけど、やえちゃんならいけるよ。曲とかできたらさ、ここで歌ってよ。水重市交番ステージ」
「狭すぎるってば」
◇3/24(月) 地理案内-1件 担当:天沼三弥
「オーディション、合格しました!」
「おめでとう。本当に、おめでとう」
「待って。泣いてる?」
「そりゃ泣くよ。だって、あの小さかったやえちゃんが歌手デビューだよ」
「気が早いってば」
「名前はどうするの?」
「もう決まってるよ。八咲」
「うん。シンプルでいいね」
「私、この名前大好きだから」
「お母さんに感謝だね」
「あれ?お父さんいないこと言ってたっけ?」
「話に出ないから、なんとなくそうかなって」
「勘が鋭いね。じゃあ、そんな鋭いおまわりさんに質問です。この春に〜、なんと〜、八咲は〜、音楽フェスに〜?」
「で、で、出るの!」
「春の新人音楽フェスに出ることが決まりました!」
「絶対に、絶対に行く。最前席取る。うちわも作る。サイリウムも作る。座布団も作る」
「座布団ってなに」
◇6/25(木) 遺失物・拾得物-1件 担当:亀山宣子
「天沼さんっていないんですか?」
「彼、ちょっと体調崩しちゃってね」
「えっ。病気とか?」
「ううん。そんな重いものじゃないから大丈夫。来月くらいには戻ってくるはずよ」
「そうですか」
「ハンカチわざわざ届けてくれてありがとうね」
「いえいえ」
◇10/10(土) 地理案内-1件 担当:亀山宣子
「天沼さん、まだいないんですか?」
「実は、今朝入院したらしくてね」
「何号室ですか」
「え?」
「どこの病院で、何号室ですか」
「水重中央病院の806号室よ」
「えっと、水重中央病院にはどうやって」
「ここの交番を左に進んだ所の大通りに、中央病院行きのバスが出てるわ。そこが一番早い道よ」
「なんで…なんで天沼さんのいるはずの交番で、天沼さんの場所への道を教えてもらってるんでしょうね。ごめんなさい。教えてくれてありがとうございます」
「天沼さんならきっと大丈夫よ。あなたの心配した顔を見たら、元気を出してくれるはず」
「そうだと、嬉しいです」
◇2/18(水) 地理案内-1件 担当:天沼三弥
「おまわりさん!」
「やえちゃん。また来てくれたのか」
「来るよ。当たり前じゃん」
「新曲聞いたよ。最高だった。MVに高評価もしたし、毎日聞いてる。起きる時も、寝る時も」
「あの曲、病院じゃうるさいでしょ」
「そんなことないよ。部屋のみんなも看護婦さんも、元気になるって騒いでた」
「じゃあ、おまわりさんも元気になってよ」
「十分、元気だよ」
「元気じゃないじゃん!こんな所でずっと寝込んでないで、早く交番戻ってきてよ」
「やえちゃんは、まだ実家に住んでる?」
「住んでるけど」
「最後に、したいことがあるんだ」
「最後なんて言うのやめてよ」
「やえちゃんの家までの、道を教えたい」
「なんで。なんでよ」
「やえちゃんに家までの道を教えた。それが僕たちの始まりだった。最後に、おまわりさんの仕事させてよ」
「だから最後って…」
「まず、病院前のバス停で、水重駅行きのバスに乗る」
「うん。バスね」
「そして、白仲通りで降りる」
「激安スーパーヒマラヤのある、大通り」
「そこから真っ直ぐ進めば、水重市交番が見える。そこを左に曲がって、また真っ直ぐ」
「いつもの交番を曲がって、真っ直ぐ」
「水重フラワーパークのカラフルな看板が見えたら、次は右。そうしたら、ヘビさん公園、つまり笹名公園が見えてくる。これで、やえちゃんの家に到着だね」
「うん。着いた」
「もし良かったら、交番に寄って、日誌に"地理案内-1件"と書いておいてくれないかな」
「おまわりさん。これが最後の案内のつもり?ふざけるのやめてよ。まだだよ。まだ分かんないよ。まだおまわりさんいないと、私迷っちゃうんだよ」
「幸せでいてくれ。やえちゃん」
「無理だよ」
「末広がりの八。幸せがどこまでも広がって咲き誇りますように。そうなってほしくて、八咲って名前をつけたんだから」
「全部、分かってたよ」
「はは。お見通しか」
「嘘が下手だね。お父さんは」
「やえちゃんが、鋭いのさ」
◇4/6(火) 地理案内- 件 担当:
「おまわりさん!」
「僕、どうしたの?」
「僕んちに行けなくなっちゃった」
「迷子だね。僕んちの近くに、何か目印とかあるかな?」
「あるよ。ヘビさんの公園」
「それは、笹名公園だね。公園まで行ったら、お家は分かる?」
「分かるよ!めっちゃ近くだから」
「そっか。ヘビさん公園は、まず、ここをずーっと真っ直ぐに進んでね。そうしたら、カラフルなお花が描かれてる看板が見えてくる」
「知ってるよそれ!水重フラワーパーク!」
「僕、すごいね。そこの看板を右に曲がっていけば、ヘビさん公園に到着だよ」
「分かった!ありがと…って、あれ?」
「どうしたの?」
「おまわりさん見たことある!昔テレビで歌ってたでしょ!」
「まあ、ちょっとね」
「歌ってよ!」
「ええ〜。ここで?」
「お願い!」
「じゃあ、少しだけね」
「やったー!」
「はは。水重市交番ステージじゃん」
「よっ!歌のおまわりさん!」
「それじゃ歌いますかっ。あ、その前に」
◇4/6(火) 地理案件-1件 担当:葛西八咲
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