天沼さんとやえちゃんの交番日誌

1/1
前へ
/1ページ
次へ

天沼さんとやえちゃんの交番日誌

◇3/16(土)地理案内-1件 担当:天沼三弥 「おまわりさん!」 「お嬢ちゃん。こんな遅くにどうしたの?」 「お家に行く道、分かんなくなっちゃったの」 「そっか。迷子になっちゃったんだね。お家の目印とかって分かるかな?」 「近くに、ヘビさんの公園がある」 「それはきっと笹名公園だね。公園まで行ったら、お家は分かる?」 「分かるよ!すっごい近くだもん」 「ヘビさん公園は、まず、ここをずーっと真っ直ぐに進む。そうしたら、カラフルなお花が描かれてる大きな看板が見えてくる」 「それ知ってる!水重フラワーパーク!」 「お嬢ちゃんすごいね。そこの看板を右に曲がっていくと、ヘビさん公園に到着だよ」 「分かった!おまわりさんありがとう!」 「お嬢ちゃん、お名前は?」 「わたし、かさいやえ!」 「そっか。やえちゃんか」 「いいお名前でしょ!」 「うん。とってもいい名前だと思うよ」  「ふふふ!」 「それじゃあ気をつけてね」 「うん!おまわりさん、じゃあね!」 ◇5/1(火) 遺失物・拾得物-1件 担当:天沼三弥 「おまわりさんっ!」 「おおっ。やえちゃん」 「こないだは、ありがとうございました」 「いいんだよ。あれがおまわりさんのお仕事だからね。今日はどうしたの?」 「あそこでお財布拾ったの」 「ちゃんと届けに来てくれたんだね」 「財布を拾うと、天使さんと悪魔さんに会えるんでしょ?」 「そうだよ。頭の中に出てきて問いかけてくるんだ。財布を盗むか、届けるか。って」 「だから、やえも会えると思って拾ってみたの」 「ここに来てるってことは、天使さんが勝ったのかな」 「ううん。違うの」 「どういうこと?」 「悪魔さん、いなかったの。せっかく会えると思ったのに、天使さんしかいなかった」 「ははっ。やえちゃんはすごいね」 「悪魔さんに会いたいのに!」 「やえちゃんは、一生会えなそうだね〜」 「なんで!おまわりさんのばか!」 ◇8/22(日) 地理案内-1件 担当:天沼三弥 「プールの道、忘れちゃった」 「浮き輪がまぶしいね。市民プールでいいのかな?」 「うん!市民プール!」 「ここを出て、まず左に進む。そうしたら、大きい銅像がある。剣を持ってる男の人」 「それ、知ってる。志賀郷太郎でしょ」 「やえちゃんは、頭いいんだね」 「ふふ。やえは、秀才だからね」 「で、その銅像の後ろには小さい川があって、その川に沿ってずっと進んでいく。そのまま進めば、前に水色の大きいスライダーが出てくる。それが市民プールだよ」 「ありがとう!おまわりさんの分まで、いーっぱい泳いでくるね」 「うん。よろしく頼むね」 ◇12/22(月) 地理案内-1件 担当:天沼三弥 「冬季講習っていうんだって」 「やえちゃんは、えらいね」 「先生厳しいから、イヤ!」 「お勉強は大事だよ。さぼらないでちゃんと行かないと」 「行かない。今から行ったってもう遅刻だもん」 「すばる塾までなら近道があるよ。なんとここから4分で着いちゃう」 「4分なら間に合うけど…でも、もう行かないもん」 「お母さんになんて言うの?嫌だったからさぼったって言うの?それとも嘘つくの?」 「んん…」 「やえちゃんは、秀才だもんね?」 「そ、そうだよ?やえは、秀才だからへっちゃらだよ」 「あそこのコンビニの駐車場の右脇に、細い道が長く伸びてるんだ。そこを駆け抜けたら、あら不思議。目の前にはすばる塾だ。さあ、いってらっしゃい」 「ふ、ふん!」 ◇4/16(火) 地理案内-1件 担当:天沼三弥 「おっ。やえちゃん制服似合ってるね」 「可愛いよね!さざみ中の制服」 「エコバッグ片手に、今日はお買い物?」 「そう。お母さんにおつかい頼まれちゃって」 「それでスーパーの場所を聞きに?」 「そうなんだけど、余った分はお小遣いでいいんだって。だから、おまわりさんに激安のスーパーを教えてもらいにきたの」 「さすが、賢いね。激安スーパーなら、交番を左に進んだ所の大通りに、ヒマラヤっていうのがあるよ」 「ヒマラヤ。なんか、安そう」 「でしょ。きゅうり1本、10円」 「それ、本当にきゅうり?」 ◇9月28(土) 地理案内-1件 担当:天沼三弥 「やばい。緊張してきた」 「1年生でいきなりメンバー入りなんて、やるね」 「わたしのせいで負けたら、どうしよう」 「大丈夫だよ。やえちゃんは、実力を認められてメンバー入りしてるんだから。とにかく全力。新人ルーキーやえちゃんの役割は、まず、元気を振り撒くことだよ」 「そうだね。元気で全力。おまわりさん、ちょっと大きい声出していい?」 「どうぞ」 「めーん!!どーう!!こて!!」 「魅力的な声だね」 「あの、いつの間にか時間ギリギリになっちゃってたから、水重市民体育館までの近道、教えて?」 ◇12/25(金) 地理案内-1件 担当:天沼三弥 「なんだか、気合い入ってるね」 「なんてったって、クリスマスデートだからね」 「やえちゃん、彼氏できたのか」 「中学入ったらモテモテでね。全く、つかれちゃうんだからっ」 「どんな男?」 「なんかおまわりさん、目が怖ーい」 「別に聞いただけでしょ。どんなやつなの?」 「教えませーん!」 「へえ。そうですか。どこいくの」 「水重フラワーパークだよ」 「あそこまでの道、複雑だけど大丈夫?」 「覚えてきたけど、一応、聞いとこうかな」 「教えませーん!」 「最低!おまわりさん失格!」 ◇10/5(木) 地理案内-1件 担当:天沼三弥 「この時、たかしくんの歩いた道のりは何kmですか。っていう問題」 「これはおまわりさんの仕事外です」 「道の問題だから、ほぼ道案内みたいなもんでしょ?ほら教えて教えて」 「力技がすぎるよ。いやあ、教えるっていってもね」 「もしかして分かんない?中学3年生レベルの問題だよ?あれれ?」 「分かりますけど。ほら、まずここをこうやって、足して、引いて、割って、かける」 「全部やってるじゃん」 「1200km」 「答えデカすぎ!」 ◇4/18(月) 地理案内-1件 担当:天沼三弥 「あ、制服変わった。ついに高校生?」 「女子高生のやえです」 「よろしく。女子高生のやえちゃん」 「なんか、スケベ」 「繰り返しただけでしょ」 「私ね、ギリギリまで眠りたいの。だから高校までの最短ルートをお願いします」 「もうその思考なんだ。1年生の間くらいは、真面目な早めの登校がおすすめだよ」 「そんな教えは頼んでません。最短ルートをお願いします」 「けっ、可愛くないな」 「はいスケベ発言!逮捕!すぐに逮捕して!」 「ちょっと、変な目で見られるからやめて!」 ◇9/17(水) 遺失物・拾得物-1件 担当:天沼三弥 「これ本当に落とし物?後ろに"葛西八咲"って書いてあるけど」 「クラスの子に破られたから、私がそこの道に捨てた。で、それを拾って届けにきた。だから落とし物」 「なんで、破られたの」 「秀才ぶってて、ムカつくんだって」 「こんなことされたなら、先生に言いなよ」 「言わないよ。こんなことされて崩れるほど、お母さんにやわに育てられてないから」 「強いね。お母さんも、やえちゃんも」 「いざって時は、おまわりさんがいるし。警察には誰も逆らえないでしょ?」 「もちろん。無理やりにでも逮捕してあげるよ。天沼のオリジナル罪法で」 「どんな内容?」 「麗しの葛西八咲を傷つけた罪」 「ごめん。ちょっとキモすぎるかも」 「そりゃないよ」 ◇7/23(金) 地理案内-1件 担当:天沼三弥 「とりあえず大学行ってから考えてみれば?」 「それ、みんなにも言われた。でもそのやり方嫌なんだよね。微妙に足浮かせた状態で、進みたくない」 「言いたいことはすごい分かるよ」 「だから道案内してよ。私の、将来の道案内」 「相変わらず力技だね。なにかやりたいこととかないの?」 「実は…ちょっと考えてるのが」 「え?なになに?」 「笑わないでね」 「もちろん」 「歌を、歌いたいなって」 「めーん!!どーう!!こて!!」 「急にうるさい!」 「いや、やえちゃんが前に交番でこう叫んだ時、魅力的な声だなって思ってたんだよ」 「そういえば、あったね」 「応援するよ。少しびっくりしたけど、やえちゃんならいけるよ。曲とかできたらさ、ここで歌ってよ。水重市交番ステージ」 「狭すぎるってば」 ◇3/24(月) 地理案内-1件 担当:天沼三弥 「オーディション、合格しました!」 「おめでとう。本当に、おめでとう」 「待って。泣いてる?」 「そりゃ泣くよ。だって、あの小さかったやえちゃんが歌手デビューだよ」 「気が早いってば」 「名前はどうするの?」 「もう決まってるよ。八咲」 「うん。シンプルでいいね」 「私、この名前大好きだから」 「お母さんに感謝だね」 「あれ?お父さんいないこと言ってたっけ?」 「話に出ないから、なんとなくそうかなって」 「勘が鋭いね。じゃあ、そんな鋭いおまわりさんに質問です。この春に〜、なんと〜、八咲は〜、音楽フェスに〜?」 「で、で、出るの!」 「春の新人音楽フェスに出ることが決まりました!」 「絶対に、絶対に行く。最前席取る。うちわも作る。サイリウムも作る。座布団も作る」 「座布団ってなに」 ◇6/25(木) 遺失物・拾得物-1件 担当:亀山宣子 「天沼さんっていないんですか?」 「彼、ちょっと体調崩しちゃってね」 「えっ。病気とか?」 「ううん。そんな重いものじゃないから大丈夫。来月くらいには戻ってくるはずよ」 「そうですか」 「ハンカチわざわざ届けてくれてありがとうね」 「いえいえ」 ◇10/10(土) 地理案内-1件 担当:亀山宣子 「天沼さん、まだいないんですか?」 「実は、今朝入院したらしくてね」 「何号室ですか」 「え?」 「どこの病院で、何号室ですか」 「水重中央病院の806号室よ」 「えっと、水重中央病院にはどうやって」 「ここの交番を左に進んだ所の大通りに、中央病院行きのバスが出てるわ。そこが一番早い道よ」 「なんで…なんで天沼さんのいるはずの交番で、天沼さんの場所への道を教えてもらってるんでしょうね。ごめんなさい。教えてくれてありがとうございます」 「天沼さんならきっと大丈夫よ。あなたの心配した顔を見たら、元気を出してくれるはず」 「そうだと、嬉しいです」 ◇2/18(水) 地理案内-1件 担当:天沼三弥 「おまわりさん!」 「やえちゃん。また来てくれたのか」 「来るよ。当たり前じゃん」 「新曲聞いたよ。最高だった。MVに高評価もしたし、毎日聞いてる。起きる時も、寝る時も」 「あの曲、病院じゃうるさいでしょ」 「そんなことないよ。部屋のみんなも看護婦さんも、元気になるって騒いでた」 「じゃあ、おまわりさんも元気になってよ」 「十分、元気だよ」 「元気じゃないじゃん!こんな所でずっと寝込んでないで、早く交番戻ってきてよ」 「やえちゃんは、まだ実家に住んでる?」 「住んでるけど」 「最後に、したいことがあるんだ」 「最後なんて言うのやめてよ」 「やえちゃんの家までの、道を教えたい」 「なんで。なんでよ」 「やえちゃんに家までの道を教えた。それが僕たちの始まりだった。最後に、おまわりさんの仕事させてよ」 「だから最後って…」 「まず、病院前のバス停で、水重駅行きのバスに乗る」 「うん。バスね」 「そして、白仲通りで降りる」 「激安スーパーヒマラヤのある、大通り」 「そこから真っ直ぐ進めば、水重市交番が見える。そこを左に曲がって、また真っ直ぐ」 「いつもの交番を曲がって、真っ直ぐ」 「水重フラワーパークのカラフルな看板が見えたら、次は右。そうしたら、ヘビさん公園、つまり笹名公園が見えてくる。これで、やえちゃんの家に到着だね」 「うん。着いた」 「もし良かったら、交番に寄って、日誌に"地理案内-1件"と書いておいてくれないかな」 「おまわりさん。これが最後の案内のつもり?ふざけるのやめてよ。まだだよ。まだ分かんないよ。まだおまわりさんいないと、私迷っちゃうんだよ」 「幸せでいてくれ。やえちゃん」 「無理だよ」 「末広がりの八。幸せがどこまでも広がって咲き誇りますように。そうなってほしくて、八咲って名前をつけたんだから」 「全部、分かってたよ」 「はは。お見通しか」 「嘘が下手だね。お父さんは」 「やえちゃんが、鋭いのさ」 ◇4/6(火) 地理案内- 件 担当: 「おまわりさん!」 「僕、どうしたの?」 「僕んちに行けなくなっちゃった」 「迷子だね。僕んちの近くに、何か目印とかあるかな?」 「あるよ。ヘビさんの公園」 「それは、笹名公園だね。公園まで行ったら、お家は分かる?」 「分かるよ!めっちゃ近くだから」 「そっか。ヘビさん公園は、まず、ここをずーっと真っ直ぐに進んでね。そうしたら、カラフルなお花が描かれてる看板が見えてくる」 「知ってるよそれ!水重フラワーパーク!」 「僕、すごいね。そこの看板を右に曲がっていけば、ヘビさん公園に到着だよ」 「分かった!ありがと…って、あれ?」 「どうしたの?」 「おまわりさん見たことある!昔テレビで歌ってたでしょ!」 「まあ、ちょっとね」 「歌ってよ!」 「ええ〜。ここで?」 「お願い!」 「じゃあ、少しだけね」 「やったー!」 「はは。水重市交番ステージじゃん」 「よっ!歌のおまわりさん!」 「それじゃ歌いますかっ。あ、その前に」 ◇4/6(火) 地理案件-1件 担当:葛西八咲
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加